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活動報告:2005年

PISA2003・TIMSS2003に関するコメント
2005-01-31
2004年12月に相次いで公表されたOECDによる生徒の学習到達度調査(PISA2003)と国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2003)の結果を受けたマスコミの報道や文部科学省の姿勢に対して、教育総研としてのコメントを発表しました。
 

何を問うべきか、私たちの見解

〈要約〉
OECDによる生徒の学習到達度調査(PISA2003)と国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2003)の結果が2004年12月に相次いで公表されたが、マスコミは一斉に「学力低下」と大きく報じた。新聞記事だけをみると、国際的にみて日本の子どもたちの「学力低下」が深刻だという印象だけが作られてしまうようになっている。これではまったく偏った報道であり、意図的に「学力低下」を煽っていると言わざるをえない。

しかし、日本の場合には、PISAで求められた読解力に弱さがあり、それが低下しているが、理数系では少し順位を下げたとはいえ、PISAもTIMSSでも国際的には第一位グループに入っているのである。

ただし、思考力や応用力を測る問題を中心とした内容になっているPISAの読解力が低下し、国際的にみて中位になってしまっていること、これは日本の教育課題として重く受けとめる必要がある。しかも、この読解力に関しては、平均よりもレベル5、レベル4、レベル1未満の割合が多く、上下に分裂している様子がうかがえる。

さらに、同時に行われた生活実態調査で、日本の子どもたちは家庭で勉強しないし、勉強意欲が低いという現実が明らかになっている。

ところで、PISAを実施したOECDが毎年だしている『図表でみる教育 OECD(2004年版)』によると、国内総生産に対する全教育段階の公財政支出の割合は3.5%で、OECD各国平均の5.0%を下回っており、初等中等教育だけだと27ヶ国中25位になっている。また、一般政府総支出に占める全教育段階の公財政教育支出の割合も平均を下回り、22位という状況である。

とすると、日本の子どもたちは、家での学習時間は短い、勉強意欲はない割に、しかも一人あたりにかけられる支出は多くはないという状況のもとで、PISA読解力は別にして、上位の成績を修めているのだ。

こうした点を分析しないままに、中山文科相は学校教育で「競い合う気持ち」や学校間の「競争」を強調し、全国学力調査を実施する意向を表明しているばかりか、「総合的学習の時間」削減まで発言している。これは大きな誤りである。
 
きか、私たちの見解」全文【PDF】
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