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活動報告:2006年

第16回夏季研究集会:第3分科会
2006-08-19
「子どもの視点に立った「不登校問題」研究委員会」
 
問題提起 山下英三郎(司会)
報 告  内田良子

本分科会は最初に山下英三郎委員長より、研究会を立ち上げた趣旨と研究委員の紹介をした後、参加者の自己紹介を行った。10人足らずの参加ということもあり、参加者の地元の現状及び各々が直接または間接にかかわった不登校の子どもへの取組みが話題となった。

学校現場は次々におりてくる教育課題に追われて忙しく、不登校のことはあまり話題にならないという。小中学校は文部科学省の不登校対策が現場に浸透し、学校復帰策もこの15年で出尽くした観がある。このため直接不登校の子どもを担当する機会でもない限り、現実に起こっている困難な課題として意識化されにくいという。また取組みのシステムがほぼ確立しているため関係者の間で対策的に取組まれ、子どもの問題として全体で受けとめ考える課題ではなくなっていること、さらに問題を先送りした結果、高校での不登校が深刻化していることなどが各県の発言から浮彫りにされた。

高知県や新潟県などでは、不登校の数減らしのために教育行政が数値目標をあげ、現場に圧力をかけている。学校での居場所を奪われて苦しむ生身の子どもたちの存在が、数の操作の対象となっていく危うさを、少人数の具体的な体験交流ゆえにリアルに見ることができた。

参加者の発言の後、山下英三郎さんから子どもの伴走者としてスクールソーシャルワークに取組んできた視点から「不登校問題」がレポートされた。1960 年代後半以降今日に至るまで、学校教育のなかで子どもたちは「問題行動」という形で異議申し立てをしてきた。これらの異議申し立て(校内暴力、非行、いじめ、自殺、登校拒否、不登校など)を分析し、学校という枠組みが子どもたちから問われていると問題提起をした。さらに子どもの不登校を受けとめた親や市民の活動や実践に触れた。フリースクールや学校外で子どもたちが学び育つ場をNPOと行政が連携してつくっているケースなども紹介された。子どもの居場所づくりに取組んでいる市民サイドの多様な試みと、学校復帰策に固執する教育をする側との認識の落差が明らかになった。

他方で子どもへの虐待やネグレクトから学校を長期欠席し、死に至るケースが社会問題化している。不登校と虐待をどう見極めるかなど現場の課題は多い。子どもたちがなぜ学校を拒否するのか、なぜ来ないのか、真摯に受けとめ、子どもの視点で取組むことがなされていたら、おのずと不登校と虐待との見分けはできていただろう。それを行わず、「休んだ子を学校にいかに戻すか」に終始してきた結果、虐待を見落とし、家庭が受けとめている不登校の子どもをネグレクトと誤解する現場になっている。学校を休めず追い込まれた子どもたちが心身に不調を起こして示す学校への不適応は、軽度発達障害と診断される傾向にあり、精神科医療や心理の領域の問題とされ専門家に委ねられていく。

以上のような現実をふまえての討論は活発になされた。担任として不登校をした子どもにどうかかわったのか、過去の実践が思い浮かび心が痛むと発言する教員もいた。現場に帰ったら今までの実践を見直し、「なぜ、子どもたちは学校へ来なくなったのか」を子どもの視点で検証したいという発言も出た。教育の現場における子どもの最善の利益とは何かを不登校から考える分科会となった。
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