活動報告:2006年
第16回夏季研究集会:第4分科会「学力・格差合同」
2006-08-19
問題提起 森山沾一、福田誠治
司 会 池田賢市
記 録 中川登志男
司 会 池田賢市
記 録 中川登志男
第4分科会は、教育における格差研究委員会(以下、「格差委員会」)と、学力調査研究委員会(以下、「学力委員会」)の合同報告という形で行われ、格差委員会からは森山沾一氏、学力委員会からは福田誠治氏が問題提起を行った。
両氏からの問題提起に先立ち、まず、各地の教育研究所および単組からの参加者より、「格差」や「学力」に関する各地の状況報告が行われた。その中では、公立高校の学区が全県一区になるなど、学区の緩和が進むことで、ますます地域間格差が拡大するのではないかといった不安や、いくつかの自治体で既に行われている学力調査や07年度に文部科学省が行う予定の全国学力調査で、その結果・点数が公表されると学校間の序列が進むのではないかといった懸念、また、経済格差の拡大と学力格差の拡大との関連は分かったが、それを指摘するだけだと、子どもたちにあきらめ感や虚無感が広がってしまわないか心配だ、などとする声が聞かれた。
一方で、いくつかの単組から、単組独自に奨学金事業を行うことで、格差社会に立ち向かう取り組みを行っていることも報告された。この他、教研集会で報告された取り組みを現場で実践しようとすると、新たな実践を「負担」ととらえてそれに消極的な現場の雰囲気があるといった声や、教育総研や各単組の研究所での研究成果がなかなか現場に伝わらないという問題について、引き続き考えていく必要があるのではないかといった意見も出された。
そうした各地からの報告を受けて、森山氏と福田氏からの問題提起が行われた。森山氏からは、2年間に渡った格差委員会において、「格差」という概念について、例えば「格差」と「差別」と「解放」とがどう違うのかといったことも含めて定義できたという意義があったほか、東京都や神奈川県などをケースとして、経済格差と教育格差との密接な関係を明らかにできたとの報告がなされた。その上で森山氏は、教育格差や差別を克服するための理論や政策、実践についても具体的な提言が行えたなどとして、格差委員会における研究成果を強調した。
また森山氏は、「シティズンシップや市民性、主体的に学ぶ力といったものが『ゆとり教育』の本当の部分ではなかったか。だが、新自由主義の流れの中では、そうしたことができなかった」と述べ、それらの地域地域での実践が「学力の森づくり」につながっていくと指摘した。
続いて福田氏は、OECDの統計で日本の貧困率が世界2位になったことや、格差委員会における研究で明らかになった、経済格差と教育格差との密接な関係などを引き合いに、小泉政治の5年間で日本社会における格差が明確になったと述べた。その上で福田氏は、国際的な学力調査PISAの結果を分析すると、フィンランドやアイスランドなど、高得点の国では、各学校内における成績の差は大きいが、学校間の格差は少なく、一方日本では、各学校内での成績の差は小さいが、学校間の格差は大きいと指摘し、日本は(成績で)学校を分けてしまうことが格差を拡大させているとの見解を示した。
また福田氏は、朝食を食べるか食べないかが成績に影響していると、各種の学力調査の結果から言われていることについて、「朝食を食べないから低学力なのではなく、朝食を食べない家庭環境にその原因があるとも考えられる。つまり、様々な要因が絡み合って格差が作り出されていると考えられる」と述べ、一面的ではなく、多面的な分析が必要ではないかと指摘した。
この後、問題提起者とフロアとの間で質疑応答が行われ、フロアから、「この高校に入るなら、試験でこの程度の点数を取らないといけないといった、受験学力的な指導を行わざるを得ない現実をどう考えたらよいか」などといった質問がなされ、森山氏から、「テストで測れる学力だけにとらわれると、地球人として生きていくのに必要な力が育たない。共同作業や共同体験などで、生きていくのに必要な力をつけるという、そういうことが公立学校に求められるのではないか」といった回答があった。また福田氏は、「PISAの調査結果からすると、日本では読書量があまり学力に反映されていない。つまり興味を持って学ぶということが行われていないのではないか。フィンランドでは、何が正解なのかをあえて分からないようにしておく。しかし、日本ではすぐに正解を教えてしまう。勉強とは嫌なもので、その嫌なものをいかにして子どもたちに教えるかという形にとどまる限りは、格差は縮まらないだろう」という見解を示した。
両氏からの問題提起に先立ち、まず、各地の教育研究所および単組からの参加者より、「格差」や「学力」に関する各地の状況報告が行われた。その中では、公立高校の学区が全県一区になるなど、学区の緩和が進むことで、ますます地域間格差が拡大するのではないかといった不安や、いくつかの自治体で既に行われている学力調査や07年度に文部科学省が行う予定の全国学力調査で、その結果・点数が公表されると学校間の序列が進むのではないかといった懸念、また、経済格差の拡大と学力格差の拡大との関連は分かったが、それを指摘するだけだと、子どもたちにあきらめ感や虚無感が広がってしまわないか心配だ、などとする声が聞かれた。
一方で、いくつかの単組から、単組独自に奨学金事業を行うことで、格差社会に立ち向かう取り組みを行っていることも報告された。この他、教研集会で報告された取り組みを現場で実践しようとすると、新たな実践を「負担」ととらえてそれに消極的な現場の雰囲気があるといった声や、教育総研や各単組の研究所での研究成果がなかなか現場に伝わらないという問題について、引き続き考えていく必要があるのではないかといった意見も出された。
そうした各地からの報告を受けて、森山氏と福田氏からの問題提起が行われた。森山氏からは、2年間に渡った格差委員会において、「格差」という概念について、例えば「格差」と「差別」と「解放」とがどう違うのかといったことも含めて定義できたという意義があったほか、東京都や神奈川県などをケースとして、経済格差と教育格差との密接な関係を明らかにできたとの報告がなされた。その上で森山氏は、教育格差や差別を克服するための理論や政策、実践についても具体的な提言が行えたなどとして、格差委員会における研究成果を強調した。
また森山氏は、「シティズンシップや市民性、主体的に学ぶ力といったものが『ゆとり教育』の本当の部分ではなかったか。だが、新自由主義の流れの中では、そうしたことができなかった」と述べ、それらの地域地域での実践が「学力の森づくり」につながっていくと指摘した。
続いて福田氏は、OECDの統計で日本の貧困率が世界2位になったことや、格差委員会における研究で明らかになった、経済格差と教育格差との密接な関係などを引き合いに、小泉政治の5年間で日本社会における格差が明確になったと述べた。その上で福田氏は、国際的な学力調査PISAの結果を分析すると、フィンランドやアイスランドなど、高得点の国では、各学校内における成績の差は大きいが、学校間の格差は少なく、一方日本では、各学校内での成績の差は小さいが、学校間の格差は大きいと指摘し、日本は(成績で)学校を分けてしまうことが格差を拡大させているとの見解を示した。
また福田氏は、朝食を食べるか食べないかが成績に影響していると、各種の学力調査の結果から言われていることについて、「朝食を食べないから低学力なのではなく、朝食を食べない家庭環境にその原因があるとも考えられる。つまり、様々な要因が絡み合って格差が作り出されていると考えられる」と述べ、一面的ではなく、多面的な分析が必要ではないかと指摘した。
この後、問題提起者とフロアとの間で質疑応答が行われ、フロアから、「この高校に入るなら、試験でこの程度の点数を取らないといけないといった、受験学力的な指導を行わざるを得ない現実をどう考えたらよいか」などといった質問がなされ、森山氏から、「テストで測れる学力だけにとらわれると、地球人として生きていくのに必要な力が育たない。共同作業や共同体験などで、生きていくのに必要な力をつけるという、そういうことが公立学校に求められるのではないか」といった回答があった。また福田氏は、「PISAの調査結果からすると、日本では読書量があまり学力に反映されていない。つまり興味を持って学ぶということが行われていないのではないか。フィンランドでは、何が正解なのかをあえて分からないようにしておく。しかし、日本ではすぐに正解を教えてしまう。勉強とは嫌なもので、その嫌なものをいかにして子どもたちに教えるかという形にとどまる限りは、格差は縮まらないだろう」という見解を示した。