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活動報告:2007年

第28回 日本の伝統・文化って?? PART II
2007-06-10
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■2007年6月10日(日)13:30〜
    神奈川県相模原市立勤労者総合福祉センター(サン・エールさがみはら)
    神奈川県相模原市西橋本5-4-25 TEL.042-775-5665
■主催:国民教育文化総合研究所
■共催:平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会
   神奈川県教職員組合/神奈川県高等学校教職員組合
■報告
  「日本の伝統文化」教育をどうとらえるか
   白水 智(中央学院大学)
 
 
橋本駅近くの「サン・エールさがみはら」において、国民教育文化総合研究所主催の公開研究会が行われた。普段は、夜間研究会として日本教育会館で行っているのだが、神奈川県教職員組合と神奈川高等学校教職員組合の共催を得て、東京から少し離れたところで、しかも昼間に開催することにした。

テーマは、現在、好評を博している「日本の伝統と文化」に関するものである。レポーターの白水智氏は、中央学院大学で歴史学を教えている研究者だ。なまえは「しろうず」と読む。なにやら奥ゆかしさを感じる。

白水氏は、学習指導要領を分析しながら、「伝統」に注目し、「人物」史で歴史をつないでいく教育が目指されていると指摘する。
「人物」史でつないでいく方法は、戦前の『国史』そっくりであると指摘があった。また、教科書の編成では、政治、経済の説明の後にやっと文化が出てきて、しかも文学作品の中身にまで立ち入らないで著者と作品の一覧表を覚えるくらいの授業しかなされていない。これでは、「軸」のないバラバラな知識を覚えただけの歴史理解になってしまうと、白水氏は警告する。

次に、日本青年会議所などが作成したDVD『誇り』が紹介された。これには「近現代史教育プログラム」と名付けられており、教材として学校に採用するよう働きかけが行われている。文科省は、これに130万円の予算を付けている。

このプログラムの目的は、「日本人がいかに高潔な精神を持ち合わせた民族であるのか」を学ぶことだという。とくに、「歴史を検証する上では、当時の価値観、常識で見直さなくてはならない」という歴史観を特徴とする。

これは、結局、戦争肯定論に行き着いていると、白水氏は指摘する。また、白水氏は、「史実は各時代の視点でとらえ、評価は現代の視点で下すべきもの」で、先のDVD作成者たちは逆の見方をしているとも指摘する。たとえば、カッとして友人をぶん殴ってしまった。その時はそうせざるを得なかったと肯定していては、これからも繰り返すだろう。そうではなくて、今から考えて、どうして俺はあの時あんなことをしてしまったのだろうと反省すれば、次に同じような場面がやってきてもがまんするだろう。歴史とは、これから先をどう生きるかという問う、現代のためにある、というのが白水氏の説明であった。大変わかりやすい。

最後に、日本の歴史教育が、「始めに日本国家ありき」「誇りある日本がなきゃいけない」から始まっていることに白水氏は警告を発する。

日本の国が意識されるのは7世紀頃になってのことである。北海道や沖縄は、「わが国の歴史」と括れないところに、つい最近まであった。むしろ、日本では、言語・方言など文化の多様性があり、借り物ながら仏教や漢字を吸収して雑種の文化を創り出している、このことこそ日本が誇るべきことではないのか、という強烈なメッセージが白水氏から発せられ、参加者の心を打った。

その後、参加者からの質問があり、濃密にしてしかも3時間に及ぶ研究会は終了した。この日は、雷の鳴る大雨であったが、50人の参加者を得た。共催の「平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会」の永井代表を、「新たな史実を知り、目からウロコの思いであった」とうならせたものだ。
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