活動報告:2008年
第11回教育研究所交流集会
2008-12-09
2008年12月5日、日教組各単組、単組立研究所、教育総研の研究活動に関する交流とネットワーク形成強化などを目的に『第11回教育研究所交流集会』が開催された。
「教育実践などに関する埋蔵された情報と知識の宝をどうやって発信・共有するか、その方法を皆さんと考えたい」という主旨の中村讓教育総研理事長・日教組委員長開会挨拶に続き、研究報告として京都と福岡から「カリキュラムセンター」的とりくみの先駆的実践報告を頂いた。
まず京都からは、元きょうと教組副委員長の松下佳弘さんより京都市総合教育センター内「カリキュラム開発支援センター」のとりくみについて、ビデオと共に紹介していただいた。「誰かに強要された押しつけの研修」ではなく「自主的・自発的な研修」の場として、京都市の教職員らがいつでも"コンビニ感覚"で立ち寄って自主的に勉強・研究、そしてカリキュラム開発に取り組むのを支援することを目的に2003年度7月に開設された「おこしやす:カリキュラム開発支援センター」。教員らの要望に応じて2004年より土曜日開室を導入したり、平日も朝9時から夜9時まで利用可能としたり、また教材等の貸し出しは京都市内の教職員に限るもののセンターでの閲覧は京都市以外の方や一般市民も利用可能とするオープン・ポリシーを採用、更には好立地条件なども手伝って、開設以来利用者数は増加を続け現在年間10,000人を超える利用がある。中でも最も利用の多い学習指導案は、研究授業などの折に作成されたものを京都市立の学校から収集・整理し、現在その数14,000点にのぼる。収録する学習指導案の質等に基準を設けるか否かについては、議論を重ねた結果、幅広い学習指導案を利用者自身が慎重に検討する目と、それらを参考に自分自身の指導案を組み立てる力を養ってもらいたい、そのようなスタンスから様々なものを収録することにした。ちなみに、『京都発!確かな教育実践のために』と題し実践に役立つ具体的なアイディアや情報を盛り込んだ研究開発ブックレットはこれまで13冊刊行され、その全てがHP上でダウンロード可能である。
次に福岡県教育総合研究所事務局長の三角富士夫さんより、主に現場の実践研究開発を研究所の立場からどのように応援しているかという辺りを中心に取り組みについてご報告頂いた。「一昔前のように教職員が悩みや実践を語り合いながら次への方策を生み出す『実践の知恵づくり』の場が無くなり、一人一人が実践づくりに孤立し苦悩する状況を生み出している」との現状を認識すると共に、県教研などの場に持ち込まれる、目の前の子どもをしっかりと見据えた型にはまらない充実の授業の工夫や実践報告の力に希望を見出し、それらをどうにかして現場に伝える・返すための活動を重視してきたと言う。そんな福岡総研では、「授業を拓く」シリーズ、「実践資料集」、「あなたといっしょに」(新採者向け)など多くの実践関連書籍や資料を出版してきている。出版物として報告する実践については、京都市のアプローチとは対照的に、県教研で報告された実践などの中から"ぜひ紹介したい"ものを厳選している。その分ひとつひとつの報告の内容も深く「授業を拓く」シリーズの冊子は12ページという長すぎず短すぎの中に写真と共に実践の具体的な枠組み・流れ・ポイントなどが描かれている。またこれらの執筆依頼を受けた教職員たちにとっても、実践を文章としてまとめる過程が教育観や実践を改めて問い直す貴重な成長の機会となっている。現在31集まで刊行された「授業を拓く」シリーズは一冊300円にて販売されている。更に2008年8月より〈小学校数学〉で試行を開始した「実践知恵袋」は、その名の通り授業プラン・実践報告など現場に役立つ資料を学年ごと・単元ごとにまとめて「知恵袋」に入れたもの。こちらは現在のところ無料で提供しており、メールまたはファックスで申し込みを受け付けている。詳細は福岡県教育総合研究所HPを参照のこと。どのようにして質の高い授業プランや実践報告を多く集めるか、また、例えば一時間の授業計画の単発的記述ではなく単元全体をどのように学ばせるかの展望までももたせるなど実際に現場で役立つ実践報告のあり方とはどのようなものなのか、更には利用者にも単なる模倣に終わらず目の前の子どもの実情などに合わせた創造的な活用を求めていくことなど、今後の課題に触れて三角さんの報告が締めくくられた。
お二人の報告を頂き、フロアからは「若手教職員支援のひとつとして実践案等の提供が重要であることを再認識した」「実践を助ける情報の提供も必要だが、まずは目の前の子どもや地域をしっかり見つめて教職員が学び考え実践を積み上げる場としての学校再生という視点も必要」などの感想・意見が述べられた。更にご参加いただいた各地の単組・研究所等よりそれぞれの取り組みなどについて簡単な報告を頂き、情報交換の機会とした。最後に嶺井正也教育総研所長より、「カリキュラムセンター構想」に向けて今後考えていかなければならないポイントがいくつかまとめられ、そのためにも各地の単組・研究所等とのネットワークを大事に作り上げていきたい旨述べられ、閉会となった。
「教育実践などに関する埋蔵された情報と知識の宝をどうやって発信・共有するか、その方法を皆さんと考えたい」という主旨の中村讓教育総研理事長・日教組委員長開会挨拶に続き、研究報告として京都と福岡から「カリキュラムセンター」的とりくみの先駆的実践報告を頂いた。
まず京都からは、元きょうと教組副委員長の松下佳弘さんより京都市総合教育センター内「カリキュラム開発支援センター」のとりくみについて、ビデオと共に紹介していただいた。「誰かに強要された押しつけの研修」ではなく「自主的・自発的な研修」の場として、京都市の教職員らがいつでも"コンビニ感覚"で立ち寄って自主的に勉強・研究、そしてカリキュラム開発に取り組むのを支援することを目的に2003年度7月に開設された「おこしやす:カリキュラム開発支援センター」。教員らの要望に応じて2004年より土曜日開室を導入したり、平日も朝9時から夜9時まで利用可能としたり、また教材等の貸し出しは京都市内の教職員に限るもののセンターでの閲覧は京都市以外の方や一般市民も利用可能とするオープン・ポリシーを採用、更には好立地条件なども手伝って、開設以来利用者数は増加を続け現在年間10,000人を超える利用がある。中でも最も利用の多い学習指導案は、研究授業などの折に作成されたものを京都市立の学校から収集・整理し、現在その数14,000点にのぼる。収録する学習指導案の質等に基準を設けるか否かについては、議論を重ねた結果、幅広い学習指導案を利用者自身が慎重に検討する目と、それらを参考に自分自身の指導案を組み立てる力を養ってもらいたい、そのようなスタンスから様々なものを収録することにした。ちなみに、『京都発!確かな教育実践のために』と題し実践に役立つ具体的なアイディアや情報を盛り込んだ研究開発ブックレットはこれまで13冊刊行され、その全てがHP上でダウンロード可能である。
次に福岡県教育総合研究所事務局長の三角富士夫さんより、主に現場の実践研究開発を研究所の立場からどのように応援しているかという辺りを中心に取り組みについてご報告頂いた。「一昔前のように教職員が悩みや実践を語り合いながら次への方策を生み出す『実践の知恵づくり』の場が無くなり、一人一人が実践づくりに孤立し苦悩する状況を生み出している」との現状を認識すると共に、県教研などの場に持ち込まれる、目の前の子どもをしっかりと見据えた型にはまらない充実の授業の工夫や実践報告の力に希望を見出し、それらをどうにかして現場に伝える・返すための活動を重視してきたと言う。そんな福岡総研では、「授業を拓く」シリーズ、「実践資料集」、「あなたといっしょに」(新採者向け)など多くの実践関連書籍や資料を出版してきている。出版物として報告する実践については、京都市のアプローチとは対照的に、県教研で報告された実践などの中から"ぜひ紹介したい"ものを厳選している。その分ひとつひとつの報告の内容も深く「授業を拓く」シリーズの冊子は12ページという長すぎず短すぎの中に写真と共に実践の具体的な枠組み・流れ・ポイントなどが描かれている。またこれらの執筆依頼を受けた教職員たちにとっても、実践を文章としてまとめる過程が教育観や実践を改めて問い直す貴重な成長の機会となっている。現在31集まで刊行された「授業を拓く」シリーズは一冊300円にて販売されている。更に2008年8月より〈小学校数学〉で試行を開始した「実践知恵袋」は、その名の通り授業プラン・実践報告など現場に役立つ資料を学年ごと・単元ごとにまとめて「知恵袋」に入れたもの。こちらは現在のところ無料で提供しており、メールまたはファックスで申し込みを受け付けている。詳細は福岡県教育総合研究所HPを参照のこと。どのようにして質の高い授業プランや実践報告を多く集めるか、また、例えば一時間の授業計画の単発的記述ではなく単元全体をどのように学ばせるかの展望までももたせるなど実際に現場で役立つ実践報告のあり方とはどのようなものなのか、更には利用者にも単なる模倣に終わらず目の前の子どもの実情などに合わせた創造的な活用を求めていくことなど、今後の課題に触れて三角さんの報告が締めくくられた。
お二人の報告を頂き、フロアからは「若手教職員支援のひとつとして実践案等の提供が重要であることを再認識した」「実践を助ける情報の提供も必要だが、まずは目の前の子どもや地域をしっかり見つめて教職員が学び考え実践を積み上げる場としての学校再生という視点も必要」などの感想・意見が述べられた。更にご参加いただいた各地の単組・研究所等よりそれぞれの取り組みなどについて簡単な報告を頂き、情報交換の機会とした。最後に嶺井正也教育総研所長より、「カリキュラムセンター構想」に向けて今後考えていかなければならないポイントがいくつかまとめられ、そのためにも各地の単組・研究所等とのネットワークを大事に作り上げていきたい旨述べられ、閉会となった。