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活動報告:2011年

教育総研第21回夏季研究集会
2011-10-25
  今年は教育総研設立20周年にあたり、7月29日に千葉県浦安市で20周年記念集会が開催され、翌日の30日に教育総研第21回夏季研究集会が開催された。
  夏季研究集会では、第1分科会「東日本大震災と教育復興に向けて」、第2分科会「PISA報告から見た日本の教育の課題」、第3分科会「教員研修の課題」、第4分科会「労働法と労働教育」のテーマで、討議と交流が行われた。


  (1)第1分科会「3・11東日本大震災と教育復興」

        運営 桜井智恵子(大阪大谷大学)
        報告 山口 幸夫(原子力資料情報室)
        報告 神崎 初美(兵庫県立大学)

  研究者の山口幸夫さん(原子力資料情報室)から「原発と教育の関わり」について報告された。福島での原発事故に触れ、学校での学びに必要なものは技術優先(利便性)に陥らないためには「基礎」以前の「基本」が大切。基礎と基本は違う。基本は、人と社会のあるべき方向に基づくものであるなどと述べた。また、参加者からは、「安全神話を推し進めている理科教育のあり方を深刻に受け止めざるを得ない」との厳しい意見もあった。
  神崎初美さん(兵庫県立大学)からは、「東日本大震災と教育復興 看護の立場から」との報告を受けた。災害などに遭遇した場合、自ら状況を考えて判断する意思決定能力を養うことが大事。被災地では仮設住宅に住み、「孤独死」なるケースも見られる。そうならないように人と人の結びつきを強める、そのためには「共助」が必要であり、その関係を作り出す教育が大切であると述べた。


  (2)第2分科会「PISA型読解力、学習指導要領改訂と学力調査」

        運営  嶺井 正也(専修大学)
        福田誠治(都留文科大学)
        報告  末藤美津子さん(東京未来大学)

  前日のアンドレア・シュライヒャーさんの講演とパネルディスカッションに対する感想を交えて参加者全員が自己紹介をした後、福田誠治研究会議員・PISA対策プロジェクトチーム座長から「PISA型読解力、学習指導要領改訂と学力調査」についての基調報告が行われた。また、プロジェクトチームメンバーの末藤美津子さん(東京未来大学)からPISA2009のアメリカでの影響について報告が行われた。
  討論では、PISA報告への賛否だけでなく、今年度の全国学力調査が中止にもかかわらず、各都道府県で悉皆の学力テストが実施されていることへの批判や、PISA型読解力による読書が重視され、子どもたちが読むべき本が多数、教科書で取り上げられるようになったことへの疑問も多く出された。


  (3)第3分科会「教員養成・採用・研修の改革をどう考えるか?」

        運営  広田照幸(日本大学) 
                    市川昭午(国立大学財務経営センター名誉教授)

  中教審の「教員の資質能力向上特別部会」での教員養成・採用・研修を一体としたトータルな改革案の議論をうけて、「教員養成・採用・研修の何が問題なのか、何を大切にしていかなければいけないのか」などについて、2011年春におこなわれた「教員調査」の結果が報告され、教育総研が独自にまとめた「制度改革の提案」について提案もあり、「教員養成・採用・研修」の問題や課題について議論された。
  議論では、「教員の専門性をどう考えるのか」、「4年制を基本とし、開放制を維持し、現職研修・研究制度の充実をめざす」、「10年目研修と教員免許更新制の両方を見直し、新たな現職教員の研修・研究制度に発展・統合する」などについて、参加者からの意見がだされた。

  (4)第4分科会「『キャリア教育』と『労働(法)教育』
                                           -無防備なまま生徒を卒業させないためにー」
        運営  石井小夜子(弁護士)
                    池田賢市(中央大学)
                    筒井美紀(法政大学)

  「今、いかに多くの生徒や学生たちが、雇用・労働の知識をもたないままに進学・就職しているのか」、「フリーターやワーキングプアになる若者は、甘えや努力不足が原因だ」と思う生徒・学生はどのような特徴をもっているか」、などの高校や大学等での調査データを読み解き、参加者の学校との比較などをしながら、「わが校、わが地域でいかなる労働(法)教育にとりくんでいくのか」について、問題が提起された。
  その後、3つのグループで、多くの生徒や学生たちが雇用や労働の知識を持たないまま進級、進学、就職している現状について話し合い、全体での討議につなげた。
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