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活動報告:2010年

第20回夏季研:第1分科会
2010-09-02
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第1分科会 「スクールソーシャルワーカー導入の現状と課題」
コーディネーター:嶺井正也(専修大学)、石井小夜子(弁護士)
 
 まず、コーディネーターの嶺井先生から「この分科会が『学校と地域』の連携を課題としており、今や地域と学校連携の質的充実が迫られている。そうした視点を含めスクールソーシャルワーカー(SSW)を考えてほしい」と問題提起をし、石井さんからは、SSWの導入の現状と課題が以下のように述べられた。

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  スクールソーシャルワークとは、学校を基盤とし、様々な困難に直面している子どもたちを、ソーシャルワーク(SW)の手法に基づいて支援するシステム。2008年4月文部科学省の調査事業としてSSW事業が開始され、2009年度からはそれが「学校・家庭・地域の連携協力推進」として自治体の事業に位置づけられ、国の補助が30%、地方負担が70%で2009年の人員配置は600人措置された。
  スクールカウンセラー(SC)があるのに、「なぜ、SSWを導入するのか」。SCは子どもの内面(心理)に焦点を当て、主に相談室内で問題解決が図られるが、SSWは子どもを取り巻く環境(親・学校・友達・地域等)の相互関係に焦点を当てて、不適合状態の調整に関与することで問題解決が図られるようにしている。今日の子どもが抱える困難は社会環境や社会構造と深くかかわっており、SCだけでは問題解決にはならないのではないか。
  SSWは、子どもの最善の利益実現のために、子どもの側に立って解決するための支援活動で、活動の基本姿勢は、一人ひとりの子どもの人格尊重を基にして、水平関係を築く「パートナーシップ」である。SSWでは、子どもと対等な関係を持ち、子どもの自己評価の回復と自身の持っている力を発揮することを支援し、SSWが問題解決の代行者となるのではなく当事者である子ども自身が主体になって不適合状態の軽減を図っていくものである。
  しかし、SSWの考え方や理念及び役割が学校現場でほとんど知らされていない状況のまま導入されたため、さまざまな混乱を生じさせているようだ。理念のないSSWは、「学校という組織における教育活動を円滑に行なうための補完的な役割を担うもの」になってしまい、それでは逆に、「子どもの力を邪魔するもの」となっているとの指摘がされている。
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  これらの問題提起を受け、現にSSWが配置されている地区からの現状報告がされた。

  今回、SSWそのものについて熟知しておらず、この制度の内容、地域や学校ではどのように活用されているか、などを学びたいという参加者が多かったが、分科会後半には以下のような意見・感想が述べられた。

○子ども虐待などで地域にゆるやかなネットワークづくりができており、そのなかにSSWが入ることによりネットワークが広がり、地域のいろいろな人たちに支援してもらうシステムが必要。

○学級担任の経験からすれば子どものおかれている環境が厳しくなっており、SSWが配置されていれば民生委員や地域との連携がより高まるのではないか。

○SSWには臨床心理士などがなっているが、アメリカのように養成課程が必要ではないか。

○地域や学校をめぐる課題が複雑になり錯綜している中で教員だけで対応するには限界がある。学校にも多様な教職員がおりそれぞれの役割が発揮できるようにすべきで、SSWをきちっと位置づけることが必要だ。

  スクールソーシャルワーカー導入の現状について、学校現場はもちろん地域でもその存在を理解していない。参加者の多くは、この分科会を通し、SSW制度を定着し、広げていくことの重要性を認識した。
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