2012年度 オランダ・ドイツ調査報告書
2013-02-08
2011年2月29日~3月8日にかけて行ったオランダ・ドイツ視察の報告書がまとまりました。
ワークシェアリング、脱原発、教育制度改革を大きなテーマとし、オランダのユトレヒト、ドイツのフライブルグ、シュツットガルトを訪ね、意見交換等を行ってきました。
ワークシェアリング、脱原発、教育制度改革を大きなテーマとし、オランダのユトレヒト、ドイツのフライブルグ、シュツットガルトを訪ね、意見交換等を行ってきました。
教育インターナショナル「リサーチネットワーク会議 報告
2010-07-01
開催:2010年6月14-15日
場所:ソンホテル・ブリュッセルシティセンター/ベルギー
議事次第
(1) EIの主要研究活動についての報告
(2) 経済危機後の教育:次には何が? (教育における経済危機の影響について)
(3) 教員のリーダーシップ
(4) 新しいとりくみ方法:大学や研究所との協力
(5) 教職員の労働条件-国際比較研究 (総研)
(6) EIとPISA:建設的な批判から批判的な参加へ
(7) 教育改革における労働組合の役割:教員の成果(パフォーマンス)と効果(エフェクテイヴネス)
(8) 新しいプロジェクトの始動
(9) まとめと今後のとりくみについて
内容
(1) EIの主要研究活動についての報告
① 調査研究:「教え方の学習:アフリカ・サハラ以南における無資格小学校教員の昇格」
② 調査研究:「OECD諸国における難民や亡命者の子どもたちのための教育機会」
③ 教育における国際経済危機の影響に関する追跡調査
④ 2010-2011年調査研究:中国の教育
⑤ PISA(生徒の学習到達度調査)
⑥ TALIS(教員・教授・学習に関する調査)
⑦ CEART(ILO/ユネスコ教職員勧告適用合同専門委員会)に対するEI報告
⑧ 技術報告:矯正施設での教育
⑨ 報告:幼児教育
⑩ EI記録:EFA(万人のための教育)国際モニタリング調査報告2010
⑪ 調査プロジェクト:中欧及び東欧における国際経済危機の影響を算定する
⑫ 調査プロジェクト:福祉としての教育-ヨーロッパにおける社会的弱者である若者への機会を向上させる
⑬ 調査研究:「公平性の問題」
⑭ 調査プロジェクト:アムステルダム大学との共同研究(教育改革、教育と国際経済危機)
⑮ プロジェクト提案:2010年人文社会科学でのEU FP7(欧州連合第7次研究枠組み計画)の要請
⑯ プロジェクト提案:法人税と質の高い公共サービス
(2) 経済危機後の教育:次には何が? (教育における経済危機の影響について)
2008年末の国際経済危機からEIは教育における影響を追跡調査してきた。教育予算あるいは教員の賃金労働条件はどのような影響があるか、組合はどのような対応をし、今後どのような計画があるのか等について調査した。
外国資本に頼る小国では金融危機の影響が強く、東欧などでは、公費が削減され、教育部門でも賃金引き下げ、新規雇用凍結などが行われている。アイルランドとアイスランドを除き、西欧諸国では比較的影響は少ない。フランス、ドイツ、イギリスでは公共投資のための公債を増やし、教育投資を増やすことを通知している。他の国においても、政府は教育を復興戦略に位置づけて投資しており、例えば、ノルウェーやスウェーデンは高等教育へ投資を行った。北アメリカも西欧と似たような状況で、(地方分権型の)アメリカ合衆国は、教育への投資を含めた景気刺激策を逸早く打ち立てたが、多くの州は歳入不足により教育予算の削減や一時解雇を行っている。カナダの教職員組合は、教育予算削減により、一時解雇や学級規模の拡大、団体交渉への政府介入などが行われる可能性があることを懸念している。
全ての地域で、学校の統廃合、教科やカリキュラムの削減などが報告されているが、経済危機を直接的原因として行われているかは定かでない。しかし、削減される科目は、外国語やカウンセリングなどで、その設備には経費がかさむからだと考えられる。
EFA(万人のための教育)の達成は経済危機によってますます危ぶまれている。OECD加盟諸国の教職員組合は、自国の公共部門を保護するだけでなく、他国への支援の約束を保持するよう政府に働きかけることが重要である。
政府に公費削減の圧力がかかる中、教職員組合は、未来への投資として、継続した教育の公的投資を求めていく必要がある。
(3) 教員のリーダーシップ(ケンブリッジ大学教育学部の協同研究)
これまでの学校リーダーシップの研究では、教員の専門的自立性や自信の程度は協力協同の教職文化を築く学校のリーダー達の能力に拠るところが大きいことが分かった。これまでのリーダーというのは、一部の教員に責任をあたえるポストとされる傾向があった。あらゆる教員が力量向上させる能力としてのリーダーシップという概念はなく、組織の階層の中に位置づけられていた。多くの場面で教員の独創的で革新的な能力が認識されることはなく、未開発の状態にある。教職員組合にとっての優先課題は、組合員の自信、専門的知識、そして自己効果を高めることにある。このプロジェクトの目的は、教員がリーダーシップを発揮するためのサポート体制を開発して教員の専門職意識を高めることと、このプロジェクトが教育改革にどのように貢献することができるかを模索することにある。
EI加盟組織にアンケート調査を行った結果、有益な情報を得ることができた。教員がリーダーシップを発揮する訓練をし、方針に影響を与え、教育実践を形づくり、専門的知識を構築するためには、現在の学校内の環境や機会がどんなものであるかがもっと分かるようになった。この調査の重要一面として、他の学校やより広い地域と輪を広げていくことができる可能性を得られたことがあげられる。
この活動により、教員の専門職意識を開発し高める支援をする機会と戦略を広げることができた。
(4) 新しいとりくみ方法:大学や研究所との協力(アムステルダム大学との共同研究)
ここでは、イギリスのエクスター大学での「公平性の問題(Equity Matters)」について報告を受けた。
教育における公平性には2つの側面があり、ひとつは公平で公正であること。もうひとつは、インクルージョン(包括的)であること。公平性の問題に影響をもたらす要因として、グローバル化と多様性があげられる。
プロジェクトの目的:公教育制度において、「万人のための質の高い教育」を達成するために行われている公平政策の関係性をとらえる。
アンケート項目:①教職員組合は教育における公平性をどのように概念化しているか。②それらの概念は、実践や政策の中で、どのように運用されているか。③公平性の概念に関連して、教員にとってどのような問題があるか。④EIは、公平性に関する国際的な議論に対し、どのような貢献をすることができるか。
上記のアンケートはEI加盟組織を通じて行う。この研究結果を今後、EIの政策や活動の方向性に活かしていく。
(5) 教職員の労働条件-国際比較研究 (総研)
2007-2008年度に教育総研が日教組の委託研究として行った「教職員労働国際比較研究」の報告を行った。
イングランド、スコットランド、フィンランドと比較し、日本の教職員の労働時間は長く休憩時間がとても短いこと、授業準備をする時間が少なくペーパーワークが多くこと、帰宅時間が遅く休みが取りづらいこと、仕事量が多く自信が持てない状況にあることなどを、パワーポイントを用いながら説明した。
出された質問は次のとおり:この結果を発表したときの反響はどうであったのか。他の職業でも同じような状況にあるのか。この結果を受けて、団体交渉などのとりくみを行ったのかどうか。子どもたちはどのくらい学校で勉強しているのか。日本の教員はいつ専門性開発(研修など)を行っているのか。他
出された意見は次のとおり:きちんと休みをとらないといくら働いても効率的ではない。能力も発揮できないのではないか。労働組合としてワークライフバランスを考えた働き方をすすめていく必要があるのではないか。CEART勧告を用いたらどうか。他
EI presentation.ppt
(6) EIとPISA:建設的な批判から批判的な参加へ
2000年に初めて行われたPISA(生徒の学習到達度調査)は、2003年、2006年、2009年にも実施され、今年12月7日(火)に2009年度調査の結果が公表される。
EIのメディア分析(2008年)によると、PISA2006について、各国メディアは、40%が簡単にふれる程度で、29%がランキングを引用している。また、27%が教育改革を求め、3%がPISA調査の目的などを説明し、2%が低い結果に対する教員責任を追求している。こういった状況の中、EIはTUAC(労働組合諮問委員会)での意見反映につとめ、EI加盟組織と連携し、PISA調査結果が報告されるまえにコピーを入手し分析につとめている。また、PISAの政府会議にも参加している。
PISA調査に関し、EIは以下のことを提案する。
教員の参加 → 長期的なデータの活用 → 成績順位一覧の活用方法の改善
→公平性の促進に再注目 → 社会科学を含む教科の拡大 → 健全上のリスクの警告
PISA2009の主要項目は読解力である。また、GDP成長率、移民(難民)の子どもたち、ナショナルカリキュラムなどに関連づけて分先されている。
また、TALIS(教員・教授・学習に関する調査)の結果とPISA調査の結果とが関連付けられた議論がなされる懸念もあり、警戒している。
尚、12月7日(火)の公表に先立ち、EIより加盟組織へデータと分析が送られる。(12月3日を予定)また、公表の約3週間前のTUAC会議では、PISA2009に関する傾向や主要課題についての議論がなされる。
(7) 教育改革における労働組合の役割:教員の成果と効果
教員の成果と効果の評価方法に対する対応策について議論がなされた。
効率や効果というものは、教育に限らず、公共部門全般において、今日的要求となっている。しかし、教育分野において、その評価は難しく、単純に、子どもたちの成績(テストの結果)によって、全ての教育の成果が分かるものではなく、また、教員の評価は、子どもたちの学習に影響する全ての要因となるものではない。
教育の評価に関するOECDの最近の調査では次のような傾向が見られる。
① 教育の成果を計るものさしとして、PISAや類似の標準テストへ注目
② 客観的に数量化でき、計測できるような教授、過程
③ 教育の質を計る指標としての教員評価
こういったアプローチでは、質の高い教育というものを正しくとらえることはできず、教育政策に誤った形で参照される懸念がある。EIは、教育の質や効果について、公平で公正な評価をするための要素がどんなものであるかを明らかにするための独自調査研究を行う。そのため、加盟組織にアンケート調査を行った上で、現地視察を行う。また、PISA2009の統計的分析とTALISとの相互関係を調査する。
(8) 新しいプロジェクトの始動 (2010-2011)
・ 教育における効果に関する研究
・ PISAとTALISとの関連に関する机上研究
・ 「将来的な質の高い公共サービス」についての調査研究
・ 国際的な教員のリーダーシップに関する調査研究(ケンブリッジ大学と共同)
・ 南アジア及び東南アジアにおける無資格教員のための教育に関する研究
場所:ソンホテル・ブリュッセルシティセンター/ベルギー
議事次第
(1) EIの主要研究活動についての報告
(2) 経済危機後の教育:次には何が? (教育における経済危機の影響について)
(3) 教員のリーダーシップ
(4) 新しいとりくみ方法:大学や研究所との協力
(5) 教職員の労働条件-国際比較研究 (総研)
(6) EIとPISA:建設的な批判から批判的な参加へ
(7) 教育改革における労働組合の役割:教員の成果(パフォーマンス)と効果(エフェクテイヴネス)
(8) 新しいプロジェクトの始動
(9) まとめと今後のとりくみについて
内容
(1) EIの主要研究活動についての報告
① 調査研究:「教え方の学習:アフリカ・サハラ以南における無資格小学校教員の昇格」
② 調査研究:「OECD諸国における難民や亡命者の子どもたちのための教育機会」
③ 教育における国際経済危機の影響に関する追跡調査
④ 2010-2011年調査研究:中国の教育
⑤ PISA(生徒の学習到達度調査)
⑥ TALIS(教員・教授・学習に関する調査)
⑦ CEART(ILO/ユネスコ教職員勧告適用合同専門委員会)に対するEI報告
⑧ 技術報告:矯正施設での教育
⑨ 報告:幼児教育
⑩ EI記録:EFA(万人のための教育)国際モニタリング調査報告2010
⑪ 調査プロジェクト:中欧及び東欧における国際経済危機の影響を算定する
⑫ 調査プロジェクト:福祉としての教育-ヨーロッパにおける社会的弱者である若者への機会を向上させる
⑬ 調査研究:「公平性の問題」
⑭ 調査プロジェクト:アムステルダム大学との共同研究(教育改革、教育と国際経済危機)
⑮ プロジェクト提案:2010年人文社会科学でのEU FP7(欧州連合第7次研究枠組み計画)の要請
⑯ プロジェクト提案:法人税と質の高い公共サービス
(2) 経済危機後の教育:次には何が? (教育における経済危機の影響について)
2008年末の国際経済危機からEIは教育における影響を追跡調査してきた。教育予算あるいは教員の賃金労働条件はどのような影響があるか、組合はどのような対応をし、今後どのような計画があるのか等について調査した。
外国資本に頼る小国では金融危機の影響が強く、東欧などでは、公費が削減され、教育部門でも賃金引き下げ、新規雇用凍結などが行われている。アイルランドとアイスランドを除き、西欧諸国では比較的影響は少ない。フランス、ドイツ、イギリスでは公共投資のための公債を増やし、教育投資を増やすことを通知している。他の国においても、政府は教育を復興戦略に位置づけて投資しており、例えば、ノルウェーやスウェーデンは高等教育へ投資を行った。北アメリカも西欧と似たような状況で、(地方分権型の)アメリカ合衆国は、教育への投資を含めた景気刺激策を逸早く打ち立てたが、多くの州は歳入不足により教育予算の削減や一時解雇を行っている。カナダの教職員組合は、教育予算削減により、一時解雇や学級規模の拡大、団体交渉への政府介入などが行われる可能性があることを懸念している。
全ての地域で、学校の統廃合、教科やカリキュラムの削減などが報告されているが、経済危機を直接的原因として行われているかは定かでない。しかし、削減される科目は、外国語やカウンセリングなどで、その設備には経費がかさむからだと考えられる。
EFA(万人のための教育)の達成は経済危機によってますます危ぶまれている。OECD加盟諸国の教職員組合は、自国の公共部門を保護するだけでなく、他国への支援の約束を保持するよう政府に働きかけることが重要である。
政府に公費削減の圧力がかかる中、教職員組合は、未来への投資として、継続した教育の公的投資を求めていく必要がある。
(3) 教員のリーダーシップ(ケンブリッジ大学教育学部の協同研究)
これまでの学校リーダーシップの研究では、教員の専門的自立性や自信の程度は協力協同の教職文化を築く学校のリーダー達の能力に拠るところが大きいことが分かった。これまでのリーダーというのは、一部の教員に責任をあたえるポストとされる傾向があった。あらゆる教員が力量向上させる能力としてのリーダーシップという概念はなく、組織の階層の中に位置づけられていた。多くの場面で教員の独創的で革新的な能力が認識されることはなく、未開発の状態にある。教職員組合にとっての優先課題は、組合員の自信、専門的知識、そして自己効果を高めることにある。このプロジェクトの目的は、教員がリーダーシップを発揮するためのサポート体制を開発して教員の専門職意識を高めることと、このプロジェクトが教育改革にどのように貢献することができるかを模索することにある。
EI加盟組織にアンケート調査を行った結果、有益な情報を得ることができた。教員がリーダーシップを発揮する訓練をし、方針に影響を与え、教育実践を形づくり、専門的知識を構築するためには、現在の学校内の環境や機会がどんなものであるかがもっと分かるようになった。この調査の重要一面として、他の学校やより広い地域と輪を広げていくことができる可能性を得られたことがあげられる。
この活動により、教員の専門職意識を開発し高める支援をする機会と戦略を広げることができた。
(4) 新しいとりくみ方法:大学や研究所との協力(アムステルダム大学との共同研究)
ここでは、イギリスのエクスター大学での「公平性の問題(Equity Matters)」について報告を受けた。
教育における公平性には2つの側面があり、ひとつは公平で公正であること。もうひとつは、インクルージョン(包括的)であること。公平性の問題に影響をもたらす要因として、グローバル化と多様性があげられる。
プロジェクトの目的:公教育制度において、「万人のための質の高い教育」を達成するために行われている公平政策の関係性をとらえる。
アンケート項目:①教職員組合は教育における公平性をどのように概念化しているか。②それらの概念は、実践や政策の中で、どのように運用されているか。③公平性の概念に関連して、教員にとってどのような問題があるか。④EIは、公平性に関する国際的な議論に対し、どのような貢献をすることができるか。
上記のアンケートはEI加盟組織を通じて行う。この研究結果を今後、EIの政策や活動の方向性に活かしていく。
(5) 教職員の労働条件-国際比較研究 (総研)
2007-2008年度に教育総研が日教組の委託研究として行った「教職員労働国際比較研究」の報告を行った。
イングランド、スコットランド、フィンランドと比較し、日本の教職員の労働時間は長く休憩時間がとても短いこと、授業準備をする時間が少なくペーパーワークが多くこと、帰宅時間が遅く休みが取りづらいこと、仕事量が多く自信が持てない状況にあることなどを、パワーポイントを用いながら説明した。
出された質問は次のとおり:この結果を発表したときの反響はどうであったのか。他の職業でも同じような状況にあるのか。この結果を受けて、団体交渉などのとりくみを行ったのかどうか。子どもたちはどのくらい学校で勉強しているのか。日本の教員はいつ専門性開発(研修など)を行っているのか。他
出された意見は次のとおり:きちんと休みをとらないといくら働いても効率的ではない。能力も発揮できないのではないか。労働組合としてワークライフバランスを考えた働き方をすすめていく必要があるのではないか。CEART勧告を用いたらどうか。他
EI presentation.ppt
(6) EIとPISA:建設的な批判から批判的な参加へ
2000年に初めて行われたPISA(生徒の学習到達度調査)は、2003年、2006年、2009年にも実施され、今年12月7日(火)に2009年度調査の結果が公表される。
EIのメディア分析(2008年)によると、PISA2006について、各国メディアは、40%が簡単にふれる程度で、29%がランキングを引用している。また、27%が教育改革を求め、3%がPISA調査の目的などを説明し、2%が低い結果に対する教員責任を追求している。こういった状況の中、EIはTUAC(労働組合諮問委員会)での意見反映につとめ、EI加盟組織と連携し、PISA調査結果が報告されるまえにコピーを入手し分析につとめている。また、PISAの政府会議にも参加している。
PISA調査に関し、EIは以下のことを提案する。
教員の参加 → 長期的なデータの活用 → 成績順位一覧の活用方法の改善
→公平性の促進に再注目 → 社会科学を含む教科の拡大 → 健全上のリスクの警告
PISA2009の主要項目は読解力である。また、GDP成長率、移民(難民)の子どもたち、ナショナルカリキュラムなどに関連づけて分先されている。
また、TALIS(教員・教授・学習に関する調査)の結果とPISA調査の結果とが関連付けられた議論がなされる懸念もあり、警戒している。
尚、12月7日(火)の公表に先立ち、EIより加盟組織へデータと分析が送られる。(12月3日を予定)また、公表の約3週間前のTUAC会議では、PISA2009に関する傾向や主要課題についての議論がなされる。
(7) 教育改革における労働組合の役割:教員の成果と効果
教員の成果と効果の評価方法に対する対応策について議論がなされた。
効率や効果というものは、教育に限らず、公共部門全般において、今日的要求となっている。しかし、教育分野において、その評価は難しく、単純に、子どもたちの成績(テストの結果)によって、全ての教育の成果が分かるものではなく、また、教員の評価は、子どもたちの学習に影響する全ての要因となるものではない。
教育の評価に関するOECDの最近の調査では次のような傾向が見られる。
① 教育の成果を計るものさしとして、PISAや類似の標準テストへ注目
② 客観的に数量化でき、計測できるような教授、過程
③ 教育の質を計る指標としての教員評価
こういったアプローチでは、質の高い教育というものを正しくとらえることはできず、教育政策に誤った形で参照される懸念がある。EIは、教育の質や効果について、公平で公正な評価をするための要素がどんなものであるかを明らかにするための独自調査研究を行う。そのため、加盟組織にアンケート調査を行った上で、現地視察を行う。また、PISA2009の統計的分析とTALISとの相互関係を調査する。
(8) 新しいプロジェクトの始動 (2010-2011)
・ 教育における効果に関する研究
・ PISAとTALISとの関連に関する机上研究
・ 「将来的な質の高い公共サービス」についての調査研究
・ 国際的な教員のリーダーシップに関する調査研究(ケンブリッジ大学と共同)
・ 南アジア及び東南アジアにおける無資格教員のための教育に関する研究
経済開発協力機構労働組合諮問会議-報告-
2009-12-01
経済開発協力機構(OECD)労働組合諮問会議(TUAC)教育作業部会
2009年11月17-18日、パリ
1.PISAについて
●発表者:Ms. Laura Figazzolo (EIリサーチ・インスティチュート)
●発表内容『PISA結果の分析および公表に関する代替モデルの提案』
●背景
-EIおよびTUACは、PISAの実施に対し基本的には支持しつつも、その分析と公表のされ方に懸念を抱いていた。
-2008年、PISAが国際的な教育政策議論に及ぼす影響についての研究をEIが実施
-その結果、主に次のことが明らかとなった:
・PISAの結果は、保守派・革新派、また中央政府・労働組合といった、異な る目的をもつ両方の人間に、各々の議論を進めるためのデータを提供した。
・成績順位表という形での結果報告は大きな問題をはらみ、各国のメディアが非常に単純化した報道を行った。
-そういった懸念を受け、2009年、EIリサーチ・インスティチュートは、PISA結果を取り扱う代替モデルを提案するべくPeter Mortimoreに研究を依頼。
●PISAに対する主な批判
-文化的な多様性に対する不十分な考慮
-言語の違い(翻訳の問題、言語によって変化する問題の難易度、母国語でテストを受けられない子どもたちの存在)
-サンプリング(低得点が予測される対象の排除の可能性)
-「主要教科」の強調――過剰に「経済的」なアプローチを教育政策に適用する事を奨励
-(開発および実施過程における)教員参関与の欠如
-横断式の調査デザイン(継時的変化の把握が困難)
-成績順位表によって単純化された結果の公表
-支配および不透明さ
●EI提案事項
-教員の関与。以下の2つの方法が考えられる:
・教員を対象とするグループ・ディスカッションを開催し、テスト項目などの開発においてその声を反映させる。
・テスト実施時、同時に教員を対象とするアンケートも行い、テスト結果の解釈にそのアンケートで得られた情報を活かす。
☆この点と関連し、日本から、テストの開発過程のみでなく、テスト結果データの解釈過程にも、教職員等より現場に近い人間が関わる可能性はないのかと質問。
→PISAが示す結果と学校教育現場の現実との間に乖離がある現状について、いくつかの国が報告。
→PISAに参加する50か国中、国レベルでのPISAの実施運営に関われている教職員組合は2-3に留まる。
→収集されたデータの解釈過程については、大いなる不透明性があるとの指摘。
→解釈の過程そのものに参加できなくとも、解釈の枠組みとなるインジケーターや焦点領域の決定過程に関わることで、データの解釈に間接的に関与できるのではないかとの提案。
-縦断データの収集
-地理やその他の社会科学領域を評価対象教科に含める
-データ集計・表示方法の多様化
・特に、得点順ではなく国名のアルファベット順にデータを表示することで、得点による単純な評価と競争を奨励しない、という態度を示せるのではないか?
・EI提案に対するPISA運営委員会のコメント(2009年11月)
-縦断データの収集
・多大な費用と時間を要する;特に国際レベルで縦断データを収集するのは困難。
・国レベルで縦断データをうまく収集しているところは幾つかあり(カナダ、オーストラリア、デンマーク)、それらを参考にすべき(EI)。
・今後検討
-順位表の割愛
・結局メディアが自作の順位表を作成して報道してしまうので、余計に危険性が高まる可能性。
・ただし、複雑なデータの微妙さをとらえた結果の解釈や、単なる順位表以外の結果表示も必要。
-教員の関与
・次回PISA2012に、オプションとして教員対象のアンケートも含める。
・アンケート作成にどのように組合が関わっていくかが課題(EI)
2.「図表でみる教育」について
●発表者:Mr. Andreas Schleicher (OECD)
●主なポイント(OECDウェブサイトも参照)
-教育、特に大学レベルの教育投資は、個人にも国にも、投資を大きく上回る利益をもたらす。
→経済危機にこそ、教育、特に高等教育に投資すべし。
-大学レベルの高等教育学位取得者数の増大(1998年から2006年にかけて、OECD諸国年平均4.5%の増加率)
-2007年に大学レベルの学位を有する25~34歳の割合は、OECD諸国平均で約3人に一人。カナダ、日本、韓国では、2人に一人の割合。
-OECD諸国の大部分において、義務教育終了年限で学校を離れる人の数が減っているが、ドイツ、日本、メキシコ、ポーランド、トルコ、アメリカでその人数が増えている。
-幼児教育の拡大も、OECD諸国全体で、また中でもスウェーデンにおいて目覚しい。幼児教育を受ける3-4歳の割合が、1998年には40%だったのが2007年には71%までのびた。
-義務教育終了年限で進学も就職もしなかった人は、より長い失業期間を被る。資格や技能をもたず失業状態にある25~34歳の人は、長期失業にあることが大部分の国で見受けられた。
-高校卒業者は、中学卒業者と比べて健康状態が良い傾向があり、大学卒業者は、その他の者と比べて政治的興味が高く、また他者を信頼することができる。
-韓国教育財政モデルの特徴→教員の給料がとても高い代わりに、クラスサイズを大きくすることで、児童生徒一人当たりの教育コストを下げている。
●議論
-教員養成に対する投資の経済的効果を測定する方法をOECDは開発できるのではないか、という指摘。
-世界的な教員不足という問題とも絡めて。
3.TALISについて
●発表者:
-Ms. Birgitte Birkvad (Danish Teacher Trade Unions & EI?)
-Mr. Michael Davidson (co-coordinator of TALIS, OECD)
●TALIS (Teaching and Learning International Survey)概要
-教員の労働環境および児童生徒の学習環境に関する教員視点での国際調査データを比較する、OECDの初の試み。
-2009年6月に報告書公表。
-参加国23、各国約200の中学校がランダム抽出、各サンプル校の校長1名が「校長用質問紙」に回答、また同校よりランダムに抽出された約20名の教員が「教員用質問紙」に回答。
-質問項目領域:研修、信念、態度と実践、評価とフィードバック、学校リーダーシップ
-PISA実施校におけるTALIS実施が、オプションとして提示された。
●主な結果
-不十分な研修
・4割以上の教員が研修が不十分であると回答。特に、学校内の多様性により良く応じるための研修を求める声が大きかった。(EI)
・人によっては自費ででも研修を受けに行っている。しかし、このことが、公的に提供される研修の必要性や正当性を減じるものとして解釈されてはならない。(TUAC)
・教育の改善において研修が重要であることは確かであるが、経費と利益、また需要と供給の適切なバランスを見極めなければならない。(OECD)
-不十分なフィードバック
・教員は、何のガイダンスもフィードバックも周囲から与えられず、孤立に近い環境で働いていることが多い。
・むしろ、革新的な試みに対してマイナスなフィードバックが与えられる、ということが、教員たちの大きな不満の種として挙げられた。(EI)
-教員の評価について
・¾の教員たちが、"効果的"な教員に対して高い評価や認識が与えられないこと、および恒常的に"非効果的(underperforming)"である教員に対する金銭報酬制度の変更が行われないことを報告。(OECD)
・「対業績報酬」(performance pay)と教員の質の向上との間に明確な相関関係は見られず、また給料の良さが新規教員確保にあまり効果的でなかったとする研究もあり、「対業績報酬」の効果は疑わしい。(TUAC)
-教員の信念と実践とのギャップ
・多くの教員が、一人ひとりの児童生徒の個々にニーズに応じた「子ども主導型教育」に信念としては共感しつつも、実際の実践では、従来の「教師主導型」教育方法に依拠していた。
●TALISの今後について
-今回得たデータの更なる分析
・研修だけでなく、教員養成に関するデータの分析
・どのような要因が、教授法などにおける変革を促すか?
-次回のTALIS(2012-2013年に実施予定)に向けて
・タイムライン:
・2010年5月・・費用等詳細情報と共に、参加国の募集
・2010年6月・・調査項目の最終決定
・次回調査項目の決定過程に、教員組合も関与していくべき!
・次回調査項目案(議論)
・教授スタイルと教室内の雰囲気との関係性について
・教員間の協力・協同について(教育にまつわる社会的関係性)
・教員の目から見た「効果的/効率的なティーチング」について
・参照
4.PIAAC(成人能力国際評価プログラム)について
●発表者:Mr. John P. Martin (Director for Employment, Labor, and Social Affair, OECD)
●背景:
-経済や産業のグローバル化、さらなる競争の激化、テクノロジーの進化、労働者の高齢化、などに直面する各国が、市場のニーズに柔軟に対応しうる労働力の確保のため、成人の「能力」に関する調査ツール開発をOECDに依頼。
-それを受けて、OECDが、PIAAC (Programme for the International Assessment of Adult Competencies: 成人能力国際評価プログラム)を開発中。
●PIAAC概要
-目的
・現在蓄積されている人材資本に関する包括的な評価
・実際の仕事場面における技能の活用状況の把握
・職業教育と訓練効果の評価と改善、等。
-重点評価領域:情報コミュニケーション技術リテラシーの6側面
・アクセス(情報や知識へのアクセス能力)
・整理・組織化(情報を分類体系に沿って整理・組織化する力)
・統合(類似や相違の情報と照らし合わせて、得られた情報を解釈、整理、比較等をする力)
・評価(情報の質、関連性、有用性、有効性などについて判断する力)
・構築(情報の適用・応用・デザイン・創造・表象・発表により新たな情報と知識を構築する力)
・コミュニケーション(様々な個人やグループに情報と知識を伝える力)
-参加国毎に、16~65歳の「成人」5000名以上を対象に実施。
-今までの調査と異なり、結果の活用に重きを置いており、そのための分析方法などの決定について、PIAAC委員会はTUACやBIACなどから意見をもらいたいと思っている。
-今後の予定
・2010年4-6月、27カ国の参加を得てフィールド・トライアル実施
・第一回PIAAC実施を2011-2012年頃に予定
●議論
-結果の活用に重きを置いているのは歓迎である。生産性や労働者の満足度を上げるためにも、そのことは重要だと思う。(UK)
-産業政策に関するきちんとした調査をOECDでもっとやるべきではないか。(フランス)
-今後労働者視点と雇用者視点の両方のデータを集めたい。(OECD)
5.VETについて·
●形式:「Learning for Jobs: OECD Policy Review of Vocational Education and Training(仕事につながる学習:職業教育および訓練に関する政策レビュー)」のレポートを概観しながら、Mr. Roland Schneider (TUAC, Senior Policy Adviser) がコメント。
●Learning for Jobs 概要
-2007年にプロジェクト開始
-労働市場が求める技能を備えた労働者を輩出するためのVET(Vocational Education and Training: 職業教育および訓練)プログラム開発を支援
-14カ国のVETをレビュー
-最終報告書は2010年秋発刊予定。
●議論
-カナダ→オーストラリアの国レビューについて懸念。(高い授業料、高い失業率、民間のVETプログラムに公的資金を投資すべしとのOECD提案、VET教員やトレーナーの意見が入り込む余地のないカリキュラム、等)
-スペイン→高い失業率対策として、18歳まで義務教育を延長するという国の施策に懸念。
☆日本→日教組の進める労働教育(労働者の権利、普通職業教育、職業基礎、課題研究、労働を中心とした福祉型社会の実現へ向けて、等)について発表。
2009年11月17-18日、パリ
1.PISAについて
●発表者:Ms. Laura Figazzolo (EIリサーチ・インスティチュート)
●発表内容『PISA結果の分析および公表に関する代替モデルの提案』
●背景
-EIおよびTUACは、PISAの実施に対し基本的には支持しつつも、その分析と公表のされ方に懸念を抱いていた。
-2008年、PISAが国際的な教育政策議論に及ぼす影響についての研究をEIが実施
-その結果、主に次のことが明らかとなった:
・PISAの結果は、保守派・革新派、また中央政府・労働組合といった、異な る目的をもつ両方の人間に、各々の議論を進めるためのデータを提供した。
・成績順位表という形での結果報告は大きな問題をはらみ、各国のメディアが非常に単純化した報道を行った。
-そういった懸念を受け、2009年、EIリサーチ・インスティチュートは、PISA結果を取り扱う代替モデルを提案するべくPeter Mortimoreに研究を依頼。
●PISAに対する主な批判
-文化的な多様性に対する不十分な考慮
-言語の違い(翻訳の問題、言語によって変化する問題の難易度、母国語でテストを受けられない子どもたちの存在)
-サンプリング(低得点が予測される対象の排除の可能性)
-「主要教科」の強調――過剰に「経済的」なアプローチを教育政策に適用する事を奨励
-(開発および実施過程における)教員参関与の欠如
-横断式の調査デザイン(継時的変化の把握が困難)
-成績順位表によって単純化された結果の公表
-支配および不透明さ
●EI提案事項
-教員の関与。以下の2つの方法が考えられる:
・教員を対象とするグループ・ディスカッションを開催し、テスト項目などの開発においてその声を反映させる。
・テスト実施時、同時に教員を対象とするアンケートも行い、テスト結果の解釈にそのアンケートで得られた情報を活かす。
☆この点と関連し、日本から、テストの開発過程のみでなく、テスト結果データの解釈過程にも、教職員等より現場に近い人間が関わる可能性はないのかと質問。
→PISAが示す結果と学校教育現場の現実との間に乖離がある現状について、いくつかの国が報告。
→PISAに参加する50か国中、国レベルでのPISAの実施運営に関われている教職員組合は2-3に留まる。
→収集されたデータの解釈過程については、大いなる不透明性があるとの指摘。
→解釈の過程そのものに参加できなくとも、解釈の枠組みとなるインジケーターや焦点領域の決定過程に関わることで、データの解釈に間接的に関与できるのではないかとの提案。
-縦断データの収集
-地理やその他の社会科学領域を評価対象教科に含める
-データ集計・表示方法の多様化
・特に、得点順ではなく国名のアルファベット順にデータを表示することで、得点による単純な評価と競争を奨励しない、という態度を示せるのではないか?
・EI提案に対するPISA運営委員会のコメント(2009年11月)
-縦断データの収集
・多大な費用と時間を要する;特に国際レベルで縦断データを収集するのは困難。
・国レベルで縦断データをうまく収集しているところは幾つかあり(カナダ、オーストラリア、デンマーク)、それらを参考にすべき(EI)。
・今後検討
-順位表の割愛
・結局メディアが自作の順位表を作成して報道してしまうので、余計に危険性が高まる可能性。
・ただし、複雑なデータの微妙さをとらえた結果の解釈や、単なる順位表以外の結果表示も必要。
-教員の関与
・次回PISA2012に、オプションとして教員対象のアンケートも含める。
・アンケート作成にどのように組合が関わっていくかが課題(EI)
2.「図表でみる教育」について
●発表者:Mr. Andreas Schleicher (OECD)
●主なポイント(OECDウェブサイトも参照)
-教育、特に大学レベルの教育投資は、個人にも国にも、投資を大きく上回る利益をもたらす。
→経済危機にこそ、教育、特に高等教育に投資すべし。
-大学レベルの高等教育学位取得者数の増大(1998年から2006年にかけて、OECD諸国年平均4.5%の増加率)
-2007年に大学レベルの学位を有する25~34歳の割合は、OECD諸国平均で約3人に一人。カナダ、日本、韓国では、2人に一人の割合。
-OECD諸国の大部分において、義務教育終了年限で学校を離れる人の数が減っているが、ドイツ、日本、メキシコ、ポーランド、トルコ、アメリカでその人数が増えている。
-幼児教育の拡大も、OECD諸国全体で、また中でもスウェーデンにおいて目覚しい。幼児教育を受ける3-4歳の割合が、1998年には40%だったのが2007年には71%までのびた。
-義務教育終了年限で進学も就職もしなかった人は、より長い失業期間を被る。資格や技能をもたず失業状態にある25~34歳の人は、長期失業にあることが大部分の国で見受けられた。
-高校卒業者は、中学卒業者と比べて健康状態が良い傾向があり、大学卒業者は、その他の者と比べて政治的興味が高く、また他者を信頼することができる。
-韓国教育財政モデルの特徴→教員の給料がとても高い代わりに、クラスサイズを大きくすることで、児童生徒一人当たりの教育コストを下げている。
●議論
-教員養成に対する投資の経済的効果を測定する方法をOECDは開発できるのではないか、という指摘。
-世界的な教員不足という問題とも絡めて。
3.TALISについて
●発表者:
-Ms. Birgitte Birkvad (Danish Teacher Trade Unions & EI?)
-Mr. Michael Davidson (co-coordinator of TALIS, OECD)
●TALIS (Teaching and Learning International Survey)概要
-教員の労働環境および児童生徒の学習環境に関する教員視点での国際調査データを比較する、OECDの初の試み。
-2009年6月に報告書公表。
-参加国23、各国約200の中学校がランダム抽出、各サンプル校の校長1名が「校長用質問紙」に回答、また同校よりランダムに抽出された約20名の教員が「教員用質問紙」に回答。
-質問項目領域:研修、信念、態度と実践、評価とフィードバック、学校リーダーシップ
-PISA実施校におけるTALIS実施が、オプションとして提示された。
●主な結果
-不十分な研修
・4割以上の教員が研修が不十分であると回答。特に、学校内の多様性により良く応じるための研修を求める声が大きかった。(EI)
・人によっては自費ででも研修を受けに行っている。しかし、このことが、公的に提供される研修の必要性や正当性を減じるものとして解釈されてはならない。(TUAC)
・教育の改善において研修が重要であることは確かであるが、経費と利益、また需要と供給の適切なバランスを見極めなければならない。(OECD)
-不十分なフィードバック
・教員は、何のガイダンスもフィードバックも周囲から与えられず、孤立に近い環境で働いていることが多い。
・むしろ、革新的な試みに対してマイナスなフィードバックが与えられる、ということが、教員たちの大きな不満の種として挙げられた。(EI)
-教員の評価について
・¾の教員たちが、"効果的"な教員に対して高い評価や認識が与えられないこと、および恒常的に"非効果的(underperforming)"である教員に対する金銭報酬制度の変更が行われないことを報告。(OECD)
・「対業績報酬」(performance pay)と教員の質の向上との間に明確な相関関係は見られず、また給料の良さが新規教員確保にあまり効果的でなかったとする研究もあり、「対業績報酬」の効果は疑わしい。(TUAC)
-教員の信念と実践とのギャップ
・多くの教員が、一人ひとりの児童生徒の個々にニーズに応じた「子ども主導型教育」に信念としては共感しつつも、実際の実践では、従来の「教師主導型」教育方法に依拠していた。
●TALISの今後について
-今回得たデータの更なる分析
・研修だけでなく、教員養成に関するデータの分析
・どのような要因が、教授法などにおける変革を促すか?
-次回のTALIS(2012-2013年に実施予定)に向けて
・タイムライン:
・2010年5月・・費用等詳細情報と共に、参加国の募集
・2010年6月・・調査項目の最終決定
・次回調査項目の決定過程に、教員組合も関与していくべき!
・次回調査項目案(議論)
・教授スタイルと教室内の雰囲気との関係性について
・教員間の協力・協同について(教育にまつわる社会的関係性)
・教員の目から見た「効果的/効率的なティーチング」について
・参照
4.PIAAC(成人能力国際評価プログラム)について
●発表者:Mr. John P. Martin (Director for Employment, Labor, and Social Affair, OECD)
●背景:
-経済や産業のグローバル化、さらなる競争の激化、テクノロジーの進化、労働者の高齢化、などに直面する各国が、市場のニーズに柔軟に対応しうる労働力の確保のため、成人の「能力」に関する調査ツール開発をOECDに依頼。
-それを受けて、OECDが、PIAAC (Programme for the International Assessment of Adult Competencies: 成人能力国際評価プログラム)を開発中。
●PIAAC概要
-目的
・現在蓄積されている人材資本に関する包括的な評価
・実際の仕事場面における技能の活用状況の把握
・職業教育と訓練効果の評価と改善、等。
-重点評価領域:情報コミュニケーション技術リテラシーの6側面
・アクセス(情報や知識へのアクセス能力)
・整理・組織化(情報を分類体系に沿って整理・組織化する力)
・統合(類似や相違の情報と照らし合わせて、得られた情報を解釈、整理、比較等をする力)
・評価(情報の質、関連性、有用性、有効性などについて判断する力)
・構築(情報の適用・応用・デザイン・創造・表象・発表により新たな情報と知識を構築する力)
・コミュニケーション(様々な個人やグループに情報と知識を伝える力)
-参加国毎に、16~65歳の「成人」5000名以上を対象に実施。
-今までの調査と異なり、結果の活用に重きを置いており、そのための分析方法などの決定について、PIAAC委員会はTUACやBIACなどから意見をもらいたいと思っている。
-今後の予定
・2010年4-6月、27カ国の参加を得てフィールド・トライアル実施
・第一回PIAAC実施を2011-2012年頃に予定
●議論
-結果の活用に重きを置いているのは歓迎である。生産性や労働者の満足度を上げるためにも、そのことは重要だと思う。(UK)
-産業政策に関するきちんとした調査をOECDでもっとやるべきではないか。(フランス)
-今後労働者視点と雇用者視点の両方のデータを集めたい。(OECD)
5.VETについて·
●形式:「Learning for Jobs: OECD Policy Review of Vocational Education and Training(仕事につながる学習:職業教育および訓練に関する政策レビュー)」のレポートを概観しながら、Mr. Roland Schneider (TUAC, Senior Policy Adviser) がコメント。
●Learning for Jobs 概要
-2007年にプロジェクト開始
-労働市場が求める技能を備えた労働者を輩出するためのVET(Vocational Education and Training: 職業教育および訓練)プログラム開発を支援
-14カ国のVETをレビュー
-最終報告書は2010年秋発刊予定。
●議論
-カナダ→オーストラリアの国レビューについて懸念。(高い授業料、高い失業率、民間のVETプログラムに公的資金を投資すべしとのOECD提案、VET教員やトレーナーの意見が入り込む余地のないカリキュラム、等)
-スペイン→高い失業率対策として、18歳まで義務教育を延長するという国の施策に懸念。
☆日本→日教組の進める労働教育(労働者の権利、普通職業教育、職業基礎、課題研究、労働を中心とした福祉型社会の実現へ向けて、等)について発表。
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