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教育総研第21回夏季研究集会/教育総研設立20周年記念集会報告書
2013-02-08
「PISAから見た21世紀の教育」―PISA報告書
PISA報告書-1
第22回夏季研究集会報告
2013-02-01
第22回夏季研究集会報告
教育総研第21回夏季研究集会
2011-10-25
  今年は教育総研設立20周年にあたり、7月29日に千葉県浦安市で20周年記念集会が開催され、翌日の30日に教育総研第21回夏季研究集会が開催された。
  夏季研究集会では、第1分科会「東日本大震災と教育復興に向けて」、第2分科会「PISA報告から見た日本の教育の課題」、第3分科会「教員研修の課題」、第4分科会「労働法と労働教育」のテーマで、討議と交流が行われた。


  (1)第1分科会「3・11東日本大震災と教育復興」

運営 桜井智恵子(大阪大谷大学)
報告 山口 幸夫(原子力資料情報室)
報告 神崎 初美(兵庫県立大学)


  研究者の山口幸夫さん(原子力資料情報室)から「原発と教育の関わり」について報告された。福島での原発事故に触れ、学校での学びに必要なものは技術優先(利便性)に陥らないためには「基礎」以前の「基本」が大切。基礎と基本は違う。基本は、人と社会のあるべき方向に基づくものであるなどと述べた。また、参加者からは、「安全神話を推し進めている理科教育のあり方を深刻に受け止めざるを得ない」との厳しい意見もあった。
  神崎初美さん(兵庫県立大学)からは、「東日本大震災と教育復興 看護の立場から」との報告を受けた。災害などに遭遇した場合、自ら状況を考えて判断する意思決定能力を養うことが大事。被災地では仮設住宅に住み、「孤独死」なるケースも見られる。そうならないように人と人の結びつきを強める、そのためには「共助」が必要であり、その関係を作り出す教育が大切であると述べた。


  (2)第2分科会「PISA型読解力、学習指導要領改訂と学力調査」

 

運営  嶺井 正也(専修大学)

福田誠治(都留文科大学)

報告  末藤美津子さん(東京未来大学)


  前日のアンドレア・シュライヒャーさんの講演とパネルディスカッションに対する感想を交えて参加者全員が自己紹介をした後、福田誠治研究会議員・PISA対策プロジェクトチーム座長から「PISA型読解力、学習指導要領改訂と学力調査」についての基調報告が行われた。また、プロジェクトチームメンバーの末藤美津子さん(東京未来大学)からPISA2009のアメリカでの影響について報告が行われた。
  討論では、PISA報告への賛否だけでなく、今年度の全国学力調査が中止にもかかわらず、各都道府県で悉皆の学力テストが実施されていることへの批判や、PISA型読解力による読書が重視され、子どもたちが読むべき本が多数、教科書で取り上げられるようになったことへの疑問も多く出された。


  (3)第3分科会「教員養成・採用・研修の改革をどう考えるか?」

運営  広田照幸(日本大学) 

市川昭午(国立大学財務経営センター名誉教授)


  中教審の「教員の資質能力向上特別部会」での教員養成・採用・研修を一体としたトータルな改革案の議論をうけて、「教員養成・採用・研修の何が問題なのか、何を大切にしていかなければいけないのか」などについて、2011年春におこなわれた「教員調査」の結果が報告され、教育総研が独自にまとめた「制度改革の提案」について提案もあり、「教員養成・採用・研修」の問題や課題について議論された。
  議論では、「教員の専門性をどう考えるのか」、「4年制を基本とし、開放制を維持し、現職研修・研究制度の充実をめざす」、「10年目研修と教員免許更新制の両方を見直し、新たな現職教員の研修・研究制度に発展・統合する」などについて、参加者からの意見がだされた。

  (4)第4分科会「『キャリア教育』と『労働(法)教育』

-無防備なまま生徒を卒業させないためにー」

運営  石井小夜子(弁護士)

池田賢市(中央大学)

筒井美紀(法政大学)


  「今、いかに多くの生徒や学生たちが、雇用・労働の知識をもたないままに進学・就職しているのか」、「フリーターやワーキングプアになる若者は、甘えや努力不足が原因だ」と思う生徒・学生はどのような特徴をもっているか」、などの高校や大学等での調査データを読み解き、参加者の学校との比較などをしながら、「わが校、わが地域でいかなる労働(法)教育にとりくんでいくのか」について、問題が提起された。
  その後、3つのグループで、多くの生徒や学生たちが雇用や労働の知識を持たないまま進級、進学、就職している現状について話し合い、全体での討議につなげた。
第20回夏季研:第4分科会
2010-09-05
第4分科会 「何でもアリ」の「キャリア教育」を再考する
コーディネーター:筒井美紀(法政大学)
 
https://www.k-soken.gr.jp/files/content_type/type014/13/s/201605201623195984.JPGはじめにコーディネーターの筒井さんから、「キャリア教育」を考え直そうという分科会の趣旨と進め方の説明があり、参加者のグルーピングが行われた。
 
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  まず、①「キャリア教育」の適齢期、②「キャリア教育」と進路指導、③「キャリア教育」と体験学習、④「キャリア教育」とジェンダー、という4つの「お題」が提示され、参加者は自分の興味関心のある「お題」でグループを作る。それぞれのグループで「お題」に関する「問い」を立て、議論をして「解」を見つける。今回は①3人②6人③6人④3人のグループができた。
  発表はグループ②から。「『キャリア教育』とは何か?」の問いから始まり、「『キャリア教育』は、『どんなふうに生きたいか』と『自己の適性は何か』を考えさせ、目的合理的に職業や進学先を選ばせることなのだろうか?」を議論した。導き出した解を図式化して発表。
  いかに人生楽しく、仲間とともに生きることが大事かというプラス思考を18歳の段階で伝えること。人権教育のようにプログラムを組んで、労働教育をカリキュラムかすることが必要であるという解を導き出した。
  つづいてグループ③は、「『キャリア教育』は『ボランティア体験』や『職場見学』など、何らかの実体験をともなわないと成り立たない/あるいは効果的ではないのだろうか?」という問いに対し、グループ②の図で、進路指導と労働教育の円が重なるようにし、その重なった部分の中の一部として位置づけられれば効果的ではないか、という解を出した。
  グループ①は、「『キャリア教育』はどの学校段階のどの学年から始めるのが適切なのか?」の問いに、働くことや責任感などを考えることは小学校段階でもでき、「キャリア教育」を「生きていく力を身につけること」とするなら高校で終わるものでもない。好きなことややりたいことを持っていることが大事ではないか、という解を発表した。
  グループ④は、「『キャリア教育』には女性特有の課題があるのではないか?」「ジェンダー意識はいつ再生産されるか?」という問いに、女性には機会も期待もない、ロールモデルが少ないという課題がある。誰かにとって男女が分けられているほうが都合がいいのではないか、分けていればトラブルもない。しかし、トラブルがあった時の解決策を身につけさせたり、現実や権利について子どもが考えるカリキュラムづくりが必要である、という解を出した。
  全体の討議で、「学校でキャリア教育がすすまないことはかえって健全ではないか」という意見が出された。いかに生きるかを考えることは必要であるが、大合唱のタクトを振る人の意図に胡散臭さを感じる。筒井さんからも、「キャリア教育の危うさ」として、次の3点が指摘された。
 
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① 労働市場での成功にゴールを収斂させる「磁気」。それは、フリーターにさせない教育こそ肝心だといった考え方と、「失敗」した人を自己責任論によって非難する風潮を強める。
② すべてが「将来のため」になりがちで、「いま・ここを楽しむこと」が形骸化する。将来のために今やることを考えて実行するのは大事だが、それだけの人間形成などあり得ない。
③ 今の「キャリア教育」は、「自分はどんな仕事に向いているか」という適性から「どんな生き方をするか」を考えさせるもので、「個人(わたし)」に終始し(右図下部)、社会の次元が欠けている。だから子どもたちに必要なのは、「社会のしくみを知り、すべての人が生きやすい社会にするにはどうしたらいいかを考えること」である。そのため教員には「キャリア教育」の解体的理解と限定的活用が必要だ。
  以上の筒井さんの話に、参加者は新たな視点を与えられた。
第20回夏季研:第3分科会
2010-09-04
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第3分科会 「6・3・3制の見直しをめぐる動きをどう考えるか」
コーディネーター:広田照幸(日本大学)、青木純一(東京都市大学)

  第3分科会では、昨年度より活動する6・3・3研究委員会の成果を報告するとともに、参加者との意見交換を通して6・3・3制を見直す際の基本視座や課題を整理することを目的とした。
前半は広田さんが「6・3・3制となにか」をテーマに報告した。広田さんは、6・3・3制の誕生から現在までを歴史的に整理し、「6・3・3」制の学年区分には必然性がないことを明らかにした。さらに、こだわるべきは「6・3」の区分ではなく、「教育を受ける権利と教育の機会均等」であると訴えた。また、理念から距離を置く様々な現実には個別に対応する必要があることを強調した。
  広田さんの報告を受けて、参加者から以下のような意見や課題が示された。たとえば、「課程主義(修得主義)と年齢主義(履修主義)との対立する考え方についての方向をはっきりすべき」「単位制高校や総合学科は機会均等の理念を実現するのに有効」「中退者や学習困難者に対するきちんとした学習保障の取り組みを」「6・3・3制をめぐっては私立学校の位置づけを明確に」等である。
  後半は青木さんが「小中一貫教育の効果と課題」をテーマに、この10年間の小中一貫教育の取り組みについて報告した。青木さんは小中一貫教育を大きく、①研究先進校(呉市や品川区)の動き、②教育特区の動き、③教育課程特例校の動きに分けて分析した。
  その結果、小中一貫教育の特徴として、青木さんは「エビデンスが不在であること」「英語活動に偏りすぎていること」「地域格差や学力格差の危険があること」「校区の適正規模に配慮した一貫教育が増えつつあること」などを指摘した。
  参加者からは「品川区の市民は一貫教育を好意的に受入れている」「一貫教育はこれ以上拡大する可能性は薄い」「就学前教育も巻き込んだ一貫教育になる可能性がある」などの意見が出された。参加者は少なかったが、有益な話合いであった。
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