教育総研は、教育・文化や教育運動のあり方について幅広い研究を積み重ね、同時に学校現場の課題を意識しながら、今日的視点にたった政策提言を行っています。

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活動報告

 

活動報告:2007年

活動報告:2007年
2
 
若者文化研究委員会報告書
2007-06-30
若者文化研究委員会の報告書が完成しました。

報告書PDFダウンロード
 
第28回 日本の伝統・文化って?? PART II
2007-06-10
yakan28-2.jpg
 
■2007年6月10日(日)13:30〜
    神奈川県相模原市立勤労者総合福祉センター(サン・エールさがみはら)
    神奈川県相模原市西橋本5-4-25 TEL.042-775-5665
■主催:国民教育文化総合研究所
■共催:平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会
   神奈川県教職員組合/神奈川県高等学校教職員組合
■報告
  「日本の伝統文化」教育をどうとらえるか
   白水 智(中央学院大学)
 
 
橋本駅近くの「サン・エールさがみはら」において、国民教育文化総合研究所主催の公開研究会が行われた。普段は、夜間研究会として日本教育会館で行っているのだが、神奈川県教職員組合と神奈川高等学校教職員組合の共催を得て、東京から少し離れたところで、しかも昼間に開催することにした。

テーマは、現在、好評を博している「日本の伝統と文化」に関するものである。レポーターの白水智氏は、中央学院大学で歴史学を教えている研究者だ。なまえは「しろうず」と読む。なにやら奥ゆかしさを感じる。

白水氏は、学習指導要領を分析しながら、「伝統」に注目し、「人物」史で歴史をつないでいく教育が目指されていると指摘する。
「人物」史でつないでいく方法は、戦前の『国史』そっくりであると指摘があった。また、教科書の編成では、政治、経済の説明の後にやっと文化が出てきて、しかも文学作品の中身にまで立ち入らないで著者と作品の一覧表を覚えるくらいの授業しかなされていない。これでは、「軸」のないバラバラな知識を覚えただけの歴史理解になってしまうと、白水氏は警告する。

次に、日本青年会議所などが作成したDVD『誇り』が紹介された。これには「近現代史教育プログラム」と名付けられており、教材として学校に採用するよう働きかけが行われている。文科省は、これに130万円の予算を付けている。

このプログラムの目的は、「日本人がいかに高潔な精神を持ち合わせた民族であるのか」を学ぶことだという。とくに、「歴史を検証する上では、当時の価値観、常識で見直さなくてはならない」という歴史観を特徴とする。

これは、結局、戦争肯定論に行き着いていると、白水氏は指摘する。また、白水氏は、「史実は各時代の視点でとらえ、評価は現代の視点で下すべきもの」で、先のDVD作成者たちは逆の見方をしているとも指摘する。たとえば、カッとして友人をぶん殴ってしまった。その時はそうせざるを得なかったと肯定していては、これからも繰り返すだろう。そうではなくて、今から考えて、どうして俺はあの時あんなことをしてしまったのだろうと反省すれば、次に同じような場面がやってきてもがまんするだろう。歴史とは、これから先をどう生きるかという問う、現代のためにある、というのが白水氏の説明であった。大変わかりやすい。

最後に、日本の歴史教育が、「始めに日本国家ありき」「誇りある日本がなきゃいけない」から始まっていることに白水氏は警告を発する。

日本の国が意識されるのは7世紀頃になってのことである。北海道や沖縄は、「わが国の歴史」と括れないところに、つい最近まであった。むしろ、日本では、言語・方言など文化の多様性があり、借り物ながら仏教や漢字を吸収して雑種の文化を創り出している、このことこそ日本が誇るべきことではないのか、という強烈なメッセージが白水氏から発せられ、参加者の心を打った。

その後、参加者からの質問があり、濃密にしてしかも3時間に及ぶ研究会は終了した。この日は、雷の鳴る大雨であったが、50人の参加者を得た。共催の「平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会」の永井代表を、「新たな史実を知り、目からウロコの思いであった」とうならせたものだ。
 
第28回「日本の伝統・文化って?? PART II」のご案内
2007-06-10
■2007年6月10日(日)13:30〜
   神奈川県相模原市立勤労者総合福祉センター(サン・エールさがみはら)
   神奈川県相模原市西橋本5-4-25 TEL.042-775-5665
■主催:国民教育文化総合研究所
■共催:平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会
            神奈川県教職員組合/神奈川県高等学校教職員組合
■報告
    「日本の伝統文化」教育をどうとらえるか
     白水 智(中央学院大学)
■入場無料

改悪された教育基本法にもとづき、学校教育法が改定されようとしています。その主な内容は、改悪教育基本法の規定を受けて「我が国と郷土の現状と歴史についての正しい理解、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度、国際理解及び国際協調の精神」を学校教育目標に入れるというものです。
すでに東京都では「日本の伝統・文化理解教育」のカリキュラムを教育委員会が作成し、現場に下ろしはじめています。兵庫県でも始まる気配があります。

私たちはこの問題を避けて通ることができません。行政がねらう「日本の伝統と文化」とは何か、私たちはどう考えたらいいのかを一緒に考えてみませんか。

中央学院大学の白水智さんが「日本の伝統・文化理解教育」を批判・分析・検討します。
 
社会総がかりで教育再生会議案の批判検討を!
2007-06-05
6月1日に出された教育再生会議の第二次報告「社会総がかりで教育再生を」は、日本の公教育を改革するどころかよりいっそう悪化させる内容に充ち満ちています。

みなさん、「社会総がかり」で徹底的に批判する必要がありそうです。教育総研としては、みなさんによる批判の一環としてより詳細な批判検討を早急に行いますが、きわめて問題が大きい点につき、みなさんに問題提起をし、みなさんが声を出してくれることを願っています。


1.小学生から大学・大学院生のみなさん、何かおかしいと思いませんか?!
第二次報告は「目指す人間像—子供たちに身につけて欲しい力—」の中で「全ての子供たちが、高い学力と規範意識を身につけ、知・情・意・体、すなわち、学力、情報、意欲、体力の調和の取れた徳のある人間に成長すること、一人ひとりが夢や希望を持ち、社会で自立して生きていくために必要な基礎的な力をしっかり身につけた人になることを望んでいます」としています。

しかし、「全ての子供たちが、高い学力と規範意識を身につけ」、「夢や希望を持ち、社会で自立して生きていく力を身につけ」たとして、出て行く先の社会はいったいどんな社会ですか。今の日本社会は、一握りの人間しか安定した仕事につけず、社会保障や社会保険も危うく、自己責任だけが求められる不安定な社会になっていませんか?

そんな社会をどうしていくのかにまったく言及せずに、それこそ言葉は「美しい」けれどむなしい教育改革案は無責任極まると思いませんか。

同報告の「I.学力向上にあらゆる手立てでとりくむ」の「提言1」で「授業時数10%増」を打ち出し、夏休みを短くし、朝や夕方の授業時間を増やし、土曜日授業を導入するとしています。この提言をどう思いますか? 何が「学力」なのか、それを向上させる要素は何なのかについて基本的で深い議論もなく、ただ時間だけ増やせばいいという発想はまったく貧困だと思いませんか? フィンランドの子どもたちの生活や学びと比べたら一目瞭然ですよね。

さて、教育再生会議は「Iの提言4」で、「様ざまな課題を抱える子供への対応や保護者との意思疎通の問題等が生じている場合」、「指導主事、法務教官(少年院や少年鑑別所の指導者のこと:引用者注)、大学教員、弁護士、臨床心理士・精神科医、福祉司、警察官(OB)など」専門家の入るチームを作って対処することも提言しています。

これを読むかぎり、問題はすべて子どもや保護者の側にあるという立場にたっているようですね。学校側の対応や姿勢、教育の在り方などに原因があり、子どもや保護者の権利が侵害されるような問題についてはまったく考えようとしていないのは明らかです。各地の「子どもの権利オンブズパーソン」の活動に学ぶ姿勢はありません。問題があると判断した子どもや保護者を押さえこもうとしているように見えます。

学力向上のためとして、全国学力調査や習熟度別指導の拡充、学校選択制の拡大なども提言していますが、これらももっとも大事な点を踏まえない、周辺的なことでしかないと思いませんか?

今の若者や子どもは規範意識がないから、「徳育を教科化」したり、高校では奉仕活動必修化することを「II.心と体—調和の取れた人間形成を目指す」のなかで提言しています。

政治家や大企業の幹部があれこれ不正をはたらいたり、規範意識のない行動をしたりしていることは、やはり、これまでの学校教育で道徳教育が不十分だったのでしょうね。これを強化すれば政治家や大企業幹部の不道徳、不法な行動もきっとなくなるのでしょうが、いま、みなさんの前で繰り広げている行動や言動は慎んでもらいたいですよね。

とはいえ、国が市民の道徳に口を出してよくなった事例は、どこの歴史をみても見あたらないことをどうして教育再生会議のみなさんは理解しようとしないのですかね、みなさん。

先にも触れましたが、「はじめに」の部分では「人格形成」とやらが教育において強調されています。しかし、大学・大学院に関する提言ではグローバル化に対応できる「人材の育成」がきわめて強調されています。確かに「教養教育」の充実をうたってはいますが、それは「知識基盤社会」に対応した人材の育成という観点に立って提言でしかありません。

大学生は大学院生が、ますます格差が拡大し、不安定な就労状況にある時代のなかで、自らの生き方を探りながら、学問や他者とふれあって人格形成を図っていくように支援するという発想はまったく見られません。社会の形成者でなく、社会への貢献だけが求められていると思いませんか。

「おかしいよ、この提言」という声を、ぜひ、あげて下さい。


2.教職員のみなさん、怒りを感じませんか?!
「I.学力向上にあらゆる手立てでとりくむ」の「提言3」では「教員の質を高める」ことと並んで「子供と向き合う時間を大幅に増やす」としています。子どもと向き合う時間の確保、いいですよね。願ったり叶ったりじゃありませんか。

しかし、具体的に提言しているのは「副校長や、主幹等の配置など、教職員の加配措置を講ずる」ことや「各種調査や提出書類の簡素化・軽減、複数の小・中学校の事務を共同実施する体制の整備、事務の外部委託、地域の人材の協力、教育現場のIT化を進める」です。

教職員のみなさん、これで果たして子どもと向き合う時間を大幅に確保できるなんでとうてい思えませんよね?子どもと直接にかかわる一般の教職員を増やさないで、学級定数を減らすこともなく、副校長や主幹を増やすという考え方に怒りを覚えませんか?

先にも指摘しましたが、第二次報告は授業時数を10%増して学力向上を図るといっていますよね。文部科学省が40年ぶりにおこなった教員の勤務実態調査では、毎日小学校で1時間47分、中学校で2時間7分の超過勤務になっていることが明らかになっています。定数の抜本的改善なくして、どうして子どもと向き合う時間を作れるのでしょうかね。

しかもです。「IV.『教育新時代』にふさわしい財政基盤の在り方」の「提言2」で「メリハリのある給与体系」を導入しようといっています。もちろん、それは教員評価制度とセットになっています。教職員の仕事のいきがいは、いうまでもなく子どもとのふれあいであり、子ども達の成長に寄り添えるところにあるのであって、給与格差の体系を昇っていくことではないですよね。

導入されようとしている教員免許の更新制などもあわせ考えてみると、教職員のみなさん、教え子に教職への道をすすめることができますか?

こんな本質的な対応を見失っているとしかいいようのない提言に怒りを感じませんか?

怒りを全国からあげてみませんか。


3.保護者のみなさん、これではやってられないですよね。
子どもたちが懸命に努力して学力をあげても、入って行く社会が不安定で不確かになっている現状では、子育ての将来的な不安をぬぐい去ることはできないのではありませんか。第二次報告では「幼児教育の将来の無償化」ついて検討するなどと言っていますが、一人の子どもを高校あるいは大学を卒業させるまで、教育再生会議のメンバーはどれくらいの経費がかかるかを知っているのでしょうか?その教育費についての手立てについてはほとんど触れていません。

しかも、一方では、学校を選択した方がいいといい、他方では地域ぐるみで子どもを育むことが大事だと言っています。矛盾していると思いませんか?学校が違えばなかなか保護者同士話し合ったり協力できなくなる現状を知らない人たちが提言しているのだから仕方がないかも知れませんが、あまりにお粗末ではありませんか。

「全ての子供一人ひとりに応じた教育」のなかで、特別支援教育についてその充実を図る提言しています。しかし、障害のある子どもたちの教育は、インクルーシヴ教育(障害のない子どもとの共学)が原則であるとした2006年12月に国連で採択された障害者権利条約に対応した手立てについてはまったく触れていません。地域の通常の学校・学級で学ばせたいという保護者の願いに応える内容にはなっていません。これもおかしいと思いませんか?

保護者のみなさん、もっと政府や文部科学省、教育委員会に意見をぶつけてみませんか。

最後にこれだけは言っておきたいことがあります。

第二次報告は「はじめに」の「公教育再生のねらい」の部分で「教育界への信頼を保つこと」を重視すると述べています。しかし、報告を読めばよむほど、「教育界を信頼しない」という前提にたって作成されたものと言わざるをえません。

みなさん、あまりに問題の多い教育再生会議に対し、総がかりで批判をしていきましょう。
 
子どもの視点に立った『不登校問題』再検討研究委員会報告書
2007-04-30
子どもの視点に立った『不登校問題』再検討研究委員会の報告書が完成しました。
 
第27回 日本の伝統・文化って??
2007-04-27
■2007年4月27日(金)18:30〜 日本教育会館8階 第2会議室
■主催:国民教育文化総合研究所
■共催:平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会
           (財)日本教育会館
■報告
    「日本文化」と言われるのは一体何か?
     千本秀樹(筑波大学教授)


第27回夜間研究会「日本の伝統・文化って??」は、2007年4月27日、千本秀樹さん(筑波大学教授)をお招きして行われました。

改悪された教育基本法に基づき、現在国会で学校教育法「改正」法案が審議されています。その主な内容は、改悪教育基本法を受けて「我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度、国際理解及び国際協調の精神」を学校教育目標に入れるというものです。

すでに、東京都では「日本の伝統・文化理解教育」のカリキュラムを教育委員会が作成し、現場に下ろしはじめています。わたしたちはこの問題を避けてとおることが出来ません。行政がねらう「日本の伝統と文化」とは何か、わたしたちはどう考えたらよいか一緒に考えたいと思って企画したものです。
千本さんは、『「日本文化」とは何か』として、地域の人々が自主的に作ってきた日本列島各地の文化と「日本文化」はまったく異なるという基本的な視点で語られました。

「日本文化の歴史は百年しかない」といい、明治維新に近代天皇制をもって「国民国家」づくりを進めた政治的に形成されたものが「日本文化」であるといいます。その土台として「家制度」と「標準語」の策定があり、特に後者は「国語」とされ、国定教科書等を通じ徹底化されます。教育は「日本文化」形成に大きな役割をもったわけです。

しかし、政治的に形成された「日本文化」は、日本列島の文化の豊かさ奪っていきます。千本さんは、「多様性こそが文化の豊かさである」と指摘し、「国と郷土」をわざと錯覚させる改悪教育基本法(学校教育法「改正」法案も同)に注意を向けなければならないとしました。

参加者の「わたしたちはどうすればよいのか」との質問に、千本さんは、「地域史にこだわっていくこと」と回答。人々が作り上げた多様な文化を取り戻し、多様な文化をつくり出すことの重要性を訴えました。
 
第27回「日本の伝統・文化って??」のご案内
2007-04-27
■2007年4月27日(金)18:30〜 日本教育会館8階 第2会議室
■主催:国民教育文化総合研究所
■共催:平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会
           (財)日本教育会館
■報告
    「日本文化」と言われるのは一体何か?
     千本秀樹(筑波大学教授)
■入場無料

改悪された教育基本法にもとづき、学校教育法が改定されようとしています。その主な内容は、改悪教育基本法の規定を受けて「我が国と郷土の現状と歴史についての正しい理解、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度、国際理解及び国際協調の精神」を学校教育目標に入れるというものです。

すでに東京都では「日本の伝統・文化理解教育」のカリキュラムを教育委員会が作成し、現場に下ろしはじめています。兵庫県でも始まる気配があります。

私たちはこの問題を避けて通ることができません。行政がねらう「日本の伝統と文化」とは何か、私たちはどう考えたらいいのかを一緒に考えてみませんか。

近代天皇制の下で作られた「日本文化」が日本列島の文化の豊かさを奪ったと指摘する千本秀樹さん(筑波大学教授)の報告と討論を中心とした夜間公開研究会に是非ご参加下さい。
 
教育活動を萎縮させる「教育再生」関係三法に強く反対する
2007-04-16
さる3月30日、政府は教育基本法「改正」、教育再生会議第一次報告および中央教育審議会の答申等を踏まえ、きわめて短時間のうちに、「教育再生」のための法改正案を国会に上程した。これは憲法「改正」とともに安倍首相が執念をもやす戦後体制の転換という思惑を優先させたものであり、到底、容認できるものではない。

ここに強く反対を表明し、法案の撤回を求めるものである。


1.国家・社会への寄与を教育の目的とする「学校教育法等の一部を改正する法律案」
2006年12月22日に公布・施行された教育基本法に定められた教育目標を学校段階ごとに示すこと、および、あらたな職制を学校組織に導入することを目的とした今回の「学校教育法等の一部を改正する法律案」は、問題に充ちている。

第1に、教育目標規定に関わる問題である。

国会審議等を通じて多くの批判を受けた、愛国心教育など新教育基本法の教育目標規定がそのまま盛り込まれていること自体に大きな問題があることは前提にした上で、なお、以下のような問題がある。

新教育基本法はその第一条で「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」を目的としてしめした。しかしながら、「人格の完成」や「平和で民主的な国家及び社会の形成者」という観点が教育目標としては極めて弱くなっている反面、新教育基本法にはみられない「規範意識」(第21、23条)が盛り込まれている。これでは既存の体制に無批判的に従う人間の形成を主とする教育でしかなくなる。

現行法では、幼稚園を含む学校の教育目標はその「達成に努めなければならない」という努力規定になっているが、改正案では「達成するよう行われるものとする」(第23、30、46条など)と、学校による目標達成へのしばりが強くなる方向になっている。学校教育活動が制約される可能性がある。さらに、義務教育、高校、中等教育学校、大学の目標に関しすべて「社会の発展に寄与する」ことが求められている。一人ひとりの人間の幸福や人格の発展より、社会の発展の手段としての教育という側面が前面に出ている。

すでに東京都で実施されている主幹制をさらに一歩すすめた身分(=主幹教諭)として追認するほか、副校長や指導教諭などをおくことを認めている(第37、49条など)。教職員組織を過度に階層化するものであり、とうてい容認できるものではない。


2.地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案
この法律案は、曲りなりにこれまで進められてきた教育行政の地方分権化を動きに歯止めをかけ、文部科学省を頂点する中央集権的な教育行政への後戻りを生ぜしめる内容になっている。その具体的規定は、文部科学大臣による「是正要求」(第49条)と「指示」(第50条)である。

振り返ってみれば、昨年の秋、安倍晋三自民党総裁が首相に就任したとたんに報道が加速した、「いじめ自死」問題や高校・中学校での教科未履修問題における教育委員会の対応の遅れや不適切さがきっかけとなっている。しかし、法律案の骨子が固まった以降、その後、教育委員会にかかわる報道は激減した。

「改正」教育基本法第16条で規定された教育への国家関与を具体的に規定したものであり、大きな問題をはらむ内容になっている。

さらに第55条の二において、「教育委員会の共同設置その他の連携を進め」ようとしている。これは教育行政の広域化であり、教育行政と地域住民の距離を広げることになる。これも教育基本法「改正」で、「国民全体に対する直接責任」が消されてしまったことと深く関わっている。
教育行政が国民よりも国に目を向けて行われていく危険性が極めて強い。


3.教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案について
教育改革国民会議の提言を受けて、教員免許更新制等について審議した中央教育審議会は02年2月に、教員免許更新制については否定的な見解を示した答申をだした。しかし、06年7月の答申では、今度は更新制に前向きな姿勢が示され、教育再生会議第一次報告で導入が提言され、今回の教育職員免許法の一部改正案となった。

この間、02年2月答申で指摘されていた他の公務員との関係における身分保証に整合性があるのか、教員の資質向上策として妥当なのか、などの疑念は一切はらされることはなかった。しかも、教職への人材確保という観点からはむしろマイナスの制度として機能する面については何ら考慮されていない。

アメリカでしか導入されていないこの制度は愚の骨頂であり、撤回すべきである。

教育公務員特例法の一部改正案は、すでに各都道府県で実施されている「指導力不足教員の認定、特別研修および措置」にかかわる制度を法制度として確立しようとするものである。しかし、「指導改善研修」(第二十五条の二)を課した後の認定において、場合によっては免職という措置がありうることを規定(同条の三)し、01年2月の地方教育行政法改正による教職以外への転職措置に触れていない。「指導力不足教員」の排除をより強く教員人事管理を厳格化する方向を打ち出している。

教員免許更新制にしろ、「指導力不足教員」制度の確立にしろ、教員しめつけの施策であり、教育現場を萎縮させるだけである。
 
教育行財政問題研究委員会報告書
2007-03-25
教育行財政問題研究委員会の報告書が完成しました。
 
第26回「新」教育基本法の違憲性をつく!
2007-03-03
■2007年3月3日(土)13:00〜 日本教育会館7階 703号室
■主催:国民教育文化総合研究所
■共催:平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会
■協賛:日本教育会館
■問題提起

長谷川 孝(コーディネーター、立ち上がる会世話人)
永井 憲一(法政大学名誉教授、立ち上がる会代表
石井小夜子(弁護士、教育総研副代表、立ち上がる会呼びかけ人)
石川多加子(金沢大学助教授)

●夜間公開研究会の論議から
教育総研は、教育基本法改悪強行という政治状況を受けて2007年3月3日、東京・一ツ橋の日本教育会館で第26回「夜間公開研究会」を開き(共催:「平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会」、協賛:日本教育会館)、その違憲性をえぐり出す論議を重ねた。「立ち上がる会」から代表の永井憲一さん(法政大学名誉教授)と呼びかけ人の石井小夜子さん(弁護士。教育総研副代表)が、また憲法学者として石川多加子さん(金沢大学助教授)が報告し、教育評論家、長谷川孝さん(「立ち上がる会」呼びかけ人)の司会で熱のこもった話し合いを続けた。

永井さんは、「基調報告」の中で「『新』教育基本法は、この法律が本来持っている『準憲法的地位』を無視し、近代立憲主義に違反し、行政権独走の典型例であり、国際条約に違反する暴挙である」と厳しく批判し、次のように述べた。
「憲法に準ずるものであるから改憲後でなければ改正はできないはずだ。まず手続きの上で疑義がある。また、現憲法はアメリカによって押し付けられたものであるという『押し付け論』が『改憲論』の根拠になっていて、その議論は、教育基本法にも及んでいるが、これは事実ではない。日本側の意志が反映されている証拠がある。

次に、現憲法は、力による支配ではなく、国民の意思に基づく社会的合意によって作られた法を政府が守ることを原則とする『立憲主義』に立っているが、それだけにとどまらない。他の人はあまり言及しないが、日本国憲法は、『人権宣言書』なのである。立憲主義の基本には、『三権分立』という極めて重要な大原則があるはず。もし、国会の論議のなかで行政権が他に優越するような事態になれば、それは、立憲主義を崩壊させ、その根本を揺るがしかねない憂慮すべき状況を招くことにつながる。行政権の独走は厳に戒めなければならない。だが、現実にはどうであったか。

さらに『確立された国際条約』は、政治に優先するはずである。この点、『子どもの権利条約』に明確に示されている『子どもの人権』について今回の教育基本法論議のなかでどれほど重視されたか。これもまた現実には不十分と言わざるを得ない。

教育基本法は、日本の専門家自身が入念に検討を加えたという成立過程によって明らかなように、憲法の場合よりはるかに『自主的な性格』を持つ存在である。そして、私の持論だが、その目的は『主権者として国の政治に参加し、国の政治を判断するにふさわしい人間』、言い換えると、『日本国憲法が目標に掲げる平和で民主的な社会の担い手である主権者』を育てるところになければならないはずであり、それに反することを政府が行おうとするとき、断固反対を主張できる権利を保障する存在なのである。

では、この意味を踏まえながら教育基本法をめぐる論議を振り返ってみると、『思うにこれらの詔勅の根本的理念が主権在君並びに神話的国体観に基づいている事実は明らかに基本的人権を損ない、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる。よって憲法第九八条の本旨に従い、ここに衆議院は院議を以って、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。政府は直ちにこれらの謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである』と宣言した1948(昭和23)年6月19日の『衆議院決議』および、『われらはここに、教育の真の権威の確立と国民道徳の振興のために、全国民が一致して教育基本法の明示する新教育理念の普及徹底に努力をいたすべきことを期する』と明言した同日の『教育勅語等の失効確認に関する参議院決議』を無視するものと言わざるを得ない。同じ国会という舞台で行われたこの『決議』を国会としてどう考えるのか、まったく議論がなされなかった。『決議』についてこれを否定するのか肯定するのか、衆参両議院の場で確認すべきではなかったのか。

さらに今回、国会における論議の中で『教育関係法令の解釈及び運用に関しては、教育基本法の趣旨、目的にかなうよう考慮が払われなければならない』とした1976 年5月21日の最高裁判決(『旭川学テ訴訟』)に関し、ほとんど質疑が交わされなかった。これは、同判決に違背するものといわざるを得ない。

いわゆる『やらせ』が顕在化した『公聴会』について解決策が示されないまま強行採決に至った経緯は、国民や教師の意思を軽視、もしくは無視する行政権の非合理的な独走である」

続いて報告者としてまず、石井さんは、「『新』教育基本法は、自民党『新憲法草案』と合致する。幼稚園から大学まで『公の意思』貫徹が狙い。新憲法草案も『新』教育基本法も、国家を制約するという立憲主義を逆転させ、国民を規制する方向を鮮明に打ち出している。自民党の新憲法草案は、『国民はこれを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公共の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う』と述べるが、『個人の尊厳』はなによりも大切な権利ではなかったのか」と反論を加える。

次の報告者、石川さんも安倍首相が言う「美しい国」、「防衛省の発足」などに言及しながら「思想・良心の自由、学問の自由、信教の自由が危ない。日の丸・君が代を強制する動きにより一層、注目しなければならない。『教育勅語』が明示した『一旦緩急アレバ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スへシ』につながる動きととらえなければならない」と深い懸念を表明した。

参加者からは、「なぜ改悪を許してしまったのか、入念に検討すべきではないか」「教育学者・研究者は猛省すべきときではないか」との声があがり、締めくくりの討論に立ったジャーナリスト、矢倉泰久さん(「立ち上がる会から」呼びかけ人)は「改悪された『新』を『国家教育基本法』と、また、戦後を生き続けた『旧』を『民主教育基本法』と呼ぼう」と提案し、拍手を浴びた。

なお、教育総研編集の季刊誌「教育と文化」47号(4月20日刊行予定)は「新教育基本法は憲法違反だ」と題し、特集を組んでいる。お読みいただきたい。
2
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