教育総研は、教育・文化や教育運動のあり方について幅広い研究を積み重ね、同時に学校現場の課題を意識しながら、今日的視点にたった政策提言を行っています。

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活動報告

 

活動報告:2009年

活動報告:2009年
1
 
「学校と地域」研究委員会報告書
2009-12-18
「学校と地域」研究委員会報告書が完成しました。
 
経済開発協力機構労働組合諮問会議-報告-
2009-12-01
経済開発協力機構(OECD)労働組合諮問会議(TUAC)教育作業部会

2009年11月17-18日、パリ


1.PISAについて

●発表者:Ms. Laura Figazzolo (EIリサーチ・インスティチュート)

●発表内容『PISA結果の分析および公表に関する代替モデルの提案』

●背景
-EIおよびTUACは、PISAの実施に対し基本的には支持しつつも、その分析と公表のされ方に懸念を抱いていた。
-2008年、PISAが国際的な教育政策議論に及ぼす影響についての研究をEIが実施
-その結果、主に次のことが明らかとなった:
・PISAの結果は、保守派・革新派、また中央政府・労働組合といった、異な る目的をもつ両方の人間に、各々の議論を進めるためのデータを提供した。
・成績順位表という形での結果報告は大きな問題をはらみ、各国のメディアが非常に単純化した報道を行った。
-そういった懸念を受け、2009年、EIリサーチ・インスティチュートは、PISA結果を取り扱う代替モデルを提案するべくPeter Mortimoreに研究を依頼。

●PISAに対する主な批判
-文化的な多様性に対する不十分な考慮
-言語の違い(翻訳の問題、言語によって変化する問題の難易度、母国語でテストを受けられない子どもたちの存在)
-サンプリング(低得点が予測される対象の排除の可能性)
-「主要教科」の強調――過剰に「経済的」なアプローチを教育政策に適用する事を奨励
-(開発および実施過程における)教員参関与の欠如
-横断式の調査デザイン(継時的変化の把握が困難)
-成績順位表によって単純化された結果の公表
-支配および不透明さ

●EI提案事項
-教員の関与。以下の2つの方法が考えられる:
・教員を対象とするグループ・ディスカッションを開催し、テスト項目などの開発においてその声を反映させる。
・テスト実施時、同時に教員を対象とするアンケートも行い、テスト結果の解釈にそのアンケートで得られた情報を活かす。

☆この点と関連し、日本から、テストの開発過程のみでなく、テスト結果データの解釈過程にも、教職員等より現場に近い人間が関わる可能性はないのかと質問。
→PISAが示す結果と学校教育現場の現実との間に乖離がある現状について、いくつかの国が報告。
→PISAに参加する50か国中、国レベルでのPISAの実施運営に関われている教職員組合は2-3に留まる。
→収集されたデータの解釈過程については、大いなる不透明性があるとの指摘。
→解釈の過程そのものに参加できなくとも、解釈の枠組みとなるインジケーターや焦点領域の決定過程に関わることで、データの解釈に間接的に関与できるのではないかとの提案。

-縦断データの収集
-地理やその他の社会科学領域を評価対象教科に含める
-データ集計・表示方法の多様化
・特に、得点順ではなく国名のアルファベット順にデータを表示することで、得点による単純な評価と競争を奨励しない、という態度を示せるのではないか?

・EI提案に対するPISA運営委員会のコメント(2009年11月)
-縦断データの収集
・多大な費用と時間を要する;特に国際レベルで縦断データを収集するのは困難。
・国レベルで縦断データをうまく収集しているところは幾つかあり(カナダ、オーストラリア、デンマーク)、それらを参考にすべき(EI)。
・今後検討
-順位表の割愛
・結局メディアが自作の順位表を作成して報道してしまうので、余計に危険性が高まる可能性。
・ただし、複雑なデータの微妙さをとらえた結果の解釈や、単なる順位表以外の結果表示も必要。
-教員の関与
・次回PISA2012に、オプションとして教員対象のアンケートも含める。
・アンケート作成にどのように組合が関わっていくかが課題(EI)


2.「図表でみる教育」について

●発表者:Mr. Andreas Schleicher (OECD)

●主なポイント(OECDウェブサイトも参照)
-教育、特に大学レベルの教育投資は、個人にも国にも、投資を大きく上回る利益をもたらす。
→経済危機にこそ、教育、特に高等教育に投資すべし。
-大学レベルの高等教育学位取得者数の増大(1998年から2006年にかけて、OECD諸国年平均4.5%の増加率)
-2007年に大学レベルの学位を有する25~34歳の割合は、OECD諸国平均で約3人に一人。カナダ、日本、韓国では、2人に一人の割合。
-OECD諸国の大部分において、義務教育終了年限で学校を離れる人の数が減っているが、ドイツ、日本、メキシコ、ポーランド、トルコ、アメリカでその人数が増えている。
-幼児教育の拡大も、OECD諸国全体で、また中でもスウェーデンにおいて目覚しい。幼児教育を受ける3-4歳の割合が、1998年には40%だったのが2007年には71%までのびた。
-義務教育終了年限で進学も就職もしなかった人は、より長い失業期間を被る。資格や技能をもたず失業状態にある25~34歳の人は、長期失業にあることが大部分の国で見受けられた。
-高校卒業者は、中学卒業者と比べて健康状態が良い傾向があり、大学卒業者は、その他の者と比べて政治的興味が高く、また他者を信頼することができる。
-韓国教育財政モデルの特徴→教員の給料がとても高い代わりに、クラスサイズを大きくすることで、児童生徒一人当たりの教育コストを下げている。

●議論
-教員養成に対する投資の経済的効果を測定する方法をOECDは開発できるのではないか、という指摘。
-世界的な教員不足という問題とも絡めて。


3.TALISについて

●発表者:
-Ms. Birgitte Birkvad (Danish Teacher Trade Unions & EI?)
-Mr. Michael Davidson (co-coordinator of TALIS, OECD)

●TALIS (Teaching and Learning International Survey)概要
-教員の労働環境および児童生徒の学習環境に関する教員視点での国際調査データを比較する、OECDの初の試み。
-2009年6月に報告書公表。
-参加国23、各国約200の中学校がランダム抽出、各サンプル校の校長1名が「校長用質問紙」に回答、また同校よりランダムに抽出された約20名の教員が「教員用質問紙」に回答。
-質問項目領域:研修、信念、態度と実践、評価とフィードバック、学校リーダーシップ
-PISA実施校におけるTALIS実施が、オプションとして提示された。

●主な結果
-不十分な研修
・4割以上の教員が研修が不十分であると回答。特に、学校内の多様性により良く応じるための研修を求める声が大きかった。(EI)
・人によっては自費ででも研修を受けに行っている。しかし、このことが、公的に提供される研修の必要性や正当性を減じるものとして解釈されてはならない。(TUAC)
・教育の改善において研修が重要であることは確かであるが、経費と利益、また需要と供給の適切なバランスを見極めなければならない。(OECD)
-不十分なフィードバック
・教員は、何のガイダンスもフィードバックも周囲から与えられず、孤立に近い環境で働いていることが多い。
・むしろ、革新的な試みに対してマイナスなフィードバックが与えられる、ということが、教員たちの大きな不満の種として挙げられた。(EI)
-教員の評価について
・¾の教員たちが、"効果的"な教員に対して高い評価や認識が与えられないこと、および恒常的に"非効果的(underperforming)"である教員に対する金銭報酬制度の変更が行われないことを報告。(OECD)
・「対業績報酬」(performance pay)と教員の質の向上との間に明確な相関関係は見られず、また給料の良さが新規教員確保にあまり効果的でなかったとする研究もあり、「対業績報酬」の効果は疑わしい。(TUAC)
-教員の信念と実践とのギャップ
・多くの教員が、一人ひとりの児童生徒の個々にニーズに応じた「子ども主導型教育」に信念としては共感しつつも、実際の実践では、従来の「教師主導型」教育方法に依拠していた。

●TALISの今後について
-今回得たデータの更なる分析
・研修だけでなく、教員養成に関するデータの分析
・どのような要因が、教授法などにおける変革を促すか?
-次回のTALIS(2012-2013年に実施予定)に向けて
・タイムライン:
・2010年5月・・費用等詳細情報と共に、参加国の募集
・2010年6月・・調査項目の最終決定
・次回調査項目の決定過程に、教員組合も関与していくべき!
・次回調査項目案(議論)
・教授スタイルと教室内の雰囲気との関係性について
・教員間の協力・協同について(教育にまつわる社会的関係性)
・教員の目から見た「効果的/効率的なティーチング」について
・参照


4.PIAAC(成人能力国際評価プログラム)について

●発表者:Mr. John P. Martin (Director for Employment, Labor, and Social Affair, OECD)

●背景:
-経済や産業のグローバル化、さらなる競争の激化、テクノロジーの進化、労働者の高齢化、などに直面する各国が、市場のニーズに柔軟に対応しうる労働力の確保のため、成人の「能力」に関する調査ツール開発をOECDに依頼。
-それを受けて、OECDが、PIAAC (Programme for the International Assessment of Adult Competencies: 成人能力国際評価プログラム)を開発中。

●PIAAC概要
-目的
・現在蓄積されている人材資本に関する包括的な評価
・実際の仕事場面における技能の活用状況の把握
・職業教育と訓練効果の評価と改善、等。
-重点評価領域:情報コミュニケーション技術リテラシーの6側面
・アクセス(情報や知識へのアクセス能力)
・整理・組織化(情報を分類体系に沿って整理・組織化する力)
・統合(類似や相違の情報と照らし合わせて、得られた情報を解釈、整理、比較等をする力)
・評価(情報の質、関連性、有用性、有効性などについて判断する力)
・構築(情報の適用・応用・デザイン・創造・表象・発表により新たな情報と知識を構築する力)
・コミュニケーション(様々な個人やグループに情報と知識を伝える力)
-参加国毎に、16~65歳の「成人」5000名以上を対象に実施。
-今までの調査と異なり、結果の活用に重きを置いており、そのための分析方法などの決定について、PIAAC委員会はTUACやBIACなどから意見をもらいたいと思っている。
-今後の予定
・2010年4-6月、27カ国の参加を得てフィールド・トライアル実施
・第一回PIAAC実施を2011-2012年頃に予定

●議論
-結果の活用に重きを置いているのは歓迎である。生産性や労働者の満足度を上げるためにも、そのことは重要だと思う。(UK)
-産業政策に関するきちんとした調査をOECDでもっとやるべきではないか。(フランス)
-今後労働者視点と雇用者視点の両方のデータを集めたい。(OECD)


5.VETについて·

●形式:「Learning for Jobs: OECD Policy Review of Vocational Education and Training(仕事につながる学習:職業教育および訓練に関する政策レビュー)」のレポートを概観しながら、Mr. Roland Schneider (TUAC, Senior Policy Adviser) がコメント。

●Learning for Jobs 概要
-2007年にプロジェクト開始
-労働市場が求める技能を備えた労働者を輩出するためのVET(Vocational Education and Training: 職業教育および訓練)プログラム開発を支援
-14カ国のVETをレビュー
-最終報告書は2010年秋発刊予定。

●議論
-カナダ→オーストラリアの国レビューについて懸念。(高い授業料、高い失業率、民間のVETプログラムに公的資金を投資すべしとのOECD提案、VET教員やトレーナーの意見が入り込む余地のないカリキュラム、等)
-スペイン→高い失業率対策として、18歳まで義務教育を延長するという国の施策に懸念。

☆日本→日教組の進める労働教育(労働者の権利、普通職業教育、職業基礎、課題研究、労働を中心とした福祉型社会の実現へ向けて、等)について発表。
 
第12回教育研究所交流集会
2009-11-28
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第12回教育研究所交流集会

2009年11月27日、日教組各単組、単組立研究所、教育総研の研究活動に関する交流とネットワーク形成強化などを目的に『第12回教育研究所交流集会』が開催された。  まず、教育総研嶺井正也所長から、教育総研の運営と研究活動の報告がされ、続いて、山形国民教育研究所と静岡県教職員組合立教育研究所のとりくみが報告された。

山形国民教育研究所(「山形民研」)は1960年発足。設立趣旨は、「北方地域の教育実践のうえにたち 国民による、国民のための、国民の教育をうちたてるために ひろく学者、文化人、教師、父母の協力のもとに 民主的な諸団体と手を結び 今日的な教育研究のセンターとして 研究し 研究、調査をおこなう。」である。齋藤たきち所長から研究所の成り立ちと山形民研の性格・運営が報告された。 実は齋藤さんは研究所発足時に「青年」代表として運営委員になった方である。山形民研の設立趣旨にあるように、教職員だけでなく民間人がずっとかかわっている。多様な見方や研究が可能となり、しかも地域とも密接につながれるというメンバー構成は、必然的に山形民研の性格をあらわしている。研究所の古い所報も持参され回覧された。現在も、日が昇り日が暮れるまで毎日農作業をしているという齋藤さんの、「作物は黙っているけど成長する。言葉を発しないものとの共存は大変だが、発しない言葉を受け取りながら一緒に生きることはすばらしい。」という含蓄のある言葉が心に残った。 齋藤さんに続いて、伊藤充弘事務局長から、現在行われている3つの研究(①「山形の子どもの学びに関する課題」②「教職員評価に関する課題」③「特別支援教育等に関する課題」)が報告された。研究所では、現場とのつながりを作るため、今年度から県教研の中で「特別分科会」(今年度は②と③がテーマ)を設置。教研参加者はどちらかにかならず参加するという方式をとったという報告が印象に残った。 静岡県教職員組合立教育研究所(「静教組立教育研究所」)からは、細川幹太所長と静教祖の平野恵司さんが報告された。 静教組立教育研究所は「調査部」と「研究部」に分かれている。どちらも、各支部から推薦された所員と共同研究者(研究者・学識経験者)によって構成されている。研究が空論におわらず、教職員にとって役立つものをめざしながら"教育のあるべき姿"や"子どもや学校にとって大切なことは何か"について正面からとりくんでいる。 当日は研究の成果物として、「平和教育」「わたしたちがつくる未来の教育」「いっしょにつくろう、子どもの権利条約の根付いた学校」が配布された。これらは手にとれば明日からでも使える非常に実践的なものであって、現場の要求をよく満たしている。調査部の成果物では、「『子育てと学校教育に対する保護者の意識調査』報告書」が配布されたが、これもすばらしい。継続的に調査をするというのは研究所の役割の一つだとあらためて思った。 研究の部である「未来の教育を考える会」では報告書だけでなく、より具体的な課題について議論を深めるため、各地でミニシンポジウムを開催している。ここでは研究所が学校と地域の人々とのつながり役をしている姿が浮かび上がった。 静教組立教育研究所のとりくみについては、ぜひhttp://www.stu.jp/をご覧頂きたい。  この後、教育総研と二つの研究所の報告について参加者と意見交換をした。 「子どもの権利が浸透しないのは学校のあり方に問題があるからではないか。学力向上に特化されていることが問題」「学力に特化されている」「教育振興基本計画には子どもの視点がない」「子ども同士の関係性が大切」などの意見が出た。こうしてあらためて子どもの権利条約の意義が共有された。また、「研究成果をどのように教職員一人ひとりに伝えていくか」といった研究所のとりくみを現場にいかに還流するかという課題が多くの研究所から出された。 教育総研の活動では「出前講座」が評価された。最後に、「若い人たちを集めるにはやはり教育課題を中心にすえて」ということで、今年度新しく設立された岐阜教育文化総合研究所の所長の設立趣意をうかがい、参加者皆が力を得て、集会は終了した。
 
第19回夏季研究集会:第4分科会「労働と教育」
2009-09-01
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講師/ 広田 照幸(日本大学)
          / 筒井 美紀(京都女子大学)
 
 
  筒井さんによる「どうする?『ガビョウ型』労働市場における学校教育」というテーマによる問題提起を受け、広田照幸さんによるコーディネーターで議論を行った。参加者は約30人。

  筒井さんの問題提起のポイントは、新自由主義的市場化の徹底でかつての「ピラミッド型」の労働市場が「ガビョウ型」になっている現実を踏まえた上で、学校教育はどういう構造と目的をもってすすめられるべきなのかについて、①新規卒業者が正規雇用される分、他の人々が非正規雇用になってしまう現状を学校としてどう考えるのか、②学校で労働に関する教育を行う場合、最近のキャリア教育みたいに「働くことはいいことだ」だけでいいのか、むしろ「働かされている社会構造」について学ぶようにすることが大事ではないか、③厚生労働省の「今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会」が提起する労働者教育では個別紛争に個別には対応できるかもしれないが、団結や連帯の方向性を見失ってしまうのではないか、④やはり学校教育においては「基礎学力」は徹底して学べるようにすることが必要ではないか、をあげた。 

  この問題提起を受けて、そもそも学校教育や教職員の役割や「基礎学力」とは何であるのか、労働市場の構造を変革していく展望はないのか、ガビョウ型構造の底辺に位置づく労働には大企業関連の非正規雇用だけでなく中小企業の多面的能力を求められる労働も位置づいているのではないか、などの議論があった。また、どんな仕事であっても親が懸命に働いていることを子どもに伝えようとしてきた同和教育のとりくみからすると「労働観」を問い直すことも重要、といった意見もあった。

  筒井さんは③で団結や連帯の重要性を指摘しているが、④になると個体的学力を強調しており、矛盾するのではないか、そして、自立と共生、あるいは共生と自立の関係(たとえば障害のある人たちや外国人の労働問題を含む)をどう考えていくのかといったこれまで総研で検討してきた問題を深めていく必要がある。
 
第19回夏季研究集会:第3分科会「憲法から考える「法教育」(裁判員制度)」
2009-09-01
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講師/ 石井 小夜子(教育総研副所長・弁護士)
          / 佐藤 治(神奈川高教組書記長)
 
  第3分科会は、参加人数が少なかったこともあり、お互いの顔が見渡せる形で、それぞれ1度は発言しながら意見交換のできる雰囲気での開催であった。

  「それでもぼくはやってない」の映画の一節「どうか私をあなたたちが裁いてほしいやり方で裁いてください」という言葉を引用しながら石井さんから問題提起があった。
次に高校教員の佐藤さんからマイケルジャクソンの幼児虐待の無罪判決が出たときに生徒たちと一緒に考えた授業について報告があった。
  学校現場では裁判学習として「模擬裁判」がさかんである。模擬裁判を通じて事実認定や量刑の判断をすることによって裁判を身近に感じられ、参加意欲を高める方法として有効である。しかし、気をつけないと「有罪か無罪か」「クロかシロか」という判断に陥ってしまう。

  参加者がそれぞれの現場での情報交換をしたところ、まだまだ、刑事裁判の原則を子どもたちに伝えきれていないことがわかった。ついつい「立憲主義」の原則を忘れ、模擬裁判などの授業実践を行うと、「有罪か無罪か」「クロかシロか」といった刑の判断をしてしまい、それも厳罰化の方向で考えてしまう場面に陥りがちであることがわかった。刑事裁判は「有罪か有罪でないか」「クロかクロでないか」を判断する場である。

  「疑わしきは被告人の利益に」等の原則がわからないままに、裁判に臨んだならば、権力の補完に堕ちる危険性がある。
  市民参加という裁判員制度の本来の役割は「市民によるチェック」ということを忘れてはならない。

  裁判員制度は憲法学習と密接につながっている。
  憲法から出発する法教育の重要性が今現場に求められていることを、参加者全員で確認し合った。
 
第19回夏季研究集会:第2分科会「子どもの権利条約から道徳教育を考える」
2009-09-01
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講師/ 桂 正孝(宝塚造形芸術大学)
          / 池田 賢市(中央大学)
 
  まず池田さんより「子どもの権利条約の今日的意義と学校教育改革の課題」として、この条約が平和と民主主義の実現、そして人権文化の創出をめざすものであることが確認され、それをいかに学校改革に結びつけるかがいま問われているとの報告があった。つづいて桂さんから「新指導要領:特設『道徳』教育の読み方―学習権保障と人権教育の視座から―」が報告され、新学習指導要領が新保守主義による国民統合(改憲)への布石であること、1958年の道徳の時間特設から登場した「日本人」が公徳心などの強調による規範意識とセットとなることで近代立憲主義の形骸化への道が敷かれようとしている点が指摘され、人権教育推進の体制づくりが重要であることが提起された。

  会場からは、以下のような意見・指摘があり、学校での改革や授業のあり方、運動の方向としていずれも重要であることが確認された。(主なもの)

  学校を変える運動に対して現場教職員自身からの抵抗もある。
  学校現場で教職員自身が議論できない状況に追い込まれている。
  権利主体を育てるのだという意識が学校で欠けているのではないか。
  今後の教科書検定に注視しなければならない。(伝統文化教育のあり方などに注意)
  権利についての具体的イメージが教職員にも親にもないのではないか。
  子どもの権利の条例化も運動の方法としては有効ではないか。
  教育政策への子どもの参画が確保されているかどうかの検証が必要である。
  学校が子どもたちに生き方を考えさせるような場になっていかなくてはならない。
  子どもの実態から出発する実践が不可欠である。
 
第19回夏季研究集会:第1分科会
2009-09-01
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「学校・子ども・保護者は本当に結びつけるのか?」
 
 
講師/ 桜井 智恵子(大阪大谷大学)
          / 江藤 創平(日教組青年部長)
 
  30人弱の参加者を迎えて開かれた第1分科会は、まず「保護者」としての思いを想像し、次に「教職員」として向きあう現実を見つめ、その過程で「子ども」の視点と存在を問い直しながら「つながり」の目的と質と可能性を探る、そんな会であった。

  会の初めに少人数のグループに分かれ、保護者視点から想像する"子どもに望むこと"と"学校に望むこと"について意見を出し合った。その後全体での共有の場では、各グループから多くのキーワードが出されるとともに、時には何気なく選ばれ発せられたそのキーワードについて、素朴な疑問が生まれ、問いが出され、確認と議論が深められる機会となった。

・「集団規範」-様々な人と関わり集団の中で生きる力の育みを学校という場に望む-:「規範」とは何か?それは誰が何のために求めるのか?また学校で教えるべき・教えられるものなのか?
・「学力をつける」:「学力」とは何か?
・「開かれた学校」:かつてはご近所・地域の子どもやおとなが集う場所として存在し得た学校が、統廃合がすすんで、例えば学習会に保護者を誘えない教職員が増えているなど、同じ地域で暮らす〈個〉と〈個〉として教職員と保護者がつながれていない。

  分科会後半には、桜井さんが、特に子どもの視点からキーワードを再検討することをグループに要請した。その結果、例えば「学校と家庭とのコミュニケーション」の際、子どもを置き去りに子どもの頭越しに行わないこと、ポジティブなメッセージを中心に伝えること、できる限りコミュニケーションの過程に子どもの承認と参加を得る工夫を行うこと、などにまつわる実践と課題等が語られた。

  最後の"まとめ"では、まず全部ひとりで、あるいは教職員だけでやろうとはしないこと。多忙化の現状を広く知ってもらい、"弱音"を吐き、保護者や地域の人々の協力を請うこと。教職員が全てを引き受けず、保護者同士につながってもらうことで、孤立している保護者もつながれることなど、「自立」よりむしろ「成熟した依存」にこそ可能性があると、障害者運動からの学びなども引用しながら桜井さんが語った。"つながりをつくる"という新たな重荷ではなく、緊張を解く、楽になる、互いにわかりあいゆるしあえるための緩やかな"つながり"というイメージを確認し合い、また分科会参加者たちの労をねぎらい、握手と感謝の言葉を掛け合って散会となった。
 
第19回夏季研究集会
2009-09-01
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主催 国民教育文化総合研究所
日時 2009年7月24日(金)13:30~7月25日(土)12:00
会場 オリエンタルホテル東京ベイ(千葉県浦安市)


研究委員会報告
報告1)教育行財政研究委員会
報告2)「学校と地域」研究委員会
報告3)公教育にしのびよる私営化

パネルディスカッション 

■分科会
第1分科会報告「学校・子ども・保護者は本当に結びつけるのか?」
第2分科会報告「子どもの権利条約から道徳教育を考える」
第3分科会報告「憲法から考える「法教育」(裁判員制度)」
第4分科会報告「労働と教育」
 
 
  昨年同様、できるだけ多くの参加、とりわけ青年層の参加を呼びかけるため、会場を千葉県浦安市とし、社会的にも注目されている問題「子どもの貧困」をメインテーマに選んだ。分科会のテーマとしては、教育総研の研究課題の中でもニーズの高い「子どもの権利条約から道徳教育を考える」、「憲法から考える『法教育』」、「労働と教育」を選び、青年層向けに「学校・子ども・保護者は本当に結びつけるのか?」と題したワークショップを行った。

  全体会では、まず、教育総研でとりくんでいる3つの研究委員会等「教育行財政研究委員会」、「『学校と地域』研究委員会」、「EIタスクチーム『公教育にしのびよる私営化』」についての報告を行い、参加者からの質疑に応えた。

  次に、早稲田大学非常勤講師の鳫咲子さんをお招きし、「子どもの貧困と就学援助制度」と題する講演を開催した。就学援助の現状や制度の仕組み、義務教育にかかる費用、自治体間格差、子どものための政策など、様々なデータ分析をもとに、「子どもの貧困」の一因となる状況についてなどが語られた。

  その後、日本大学の広田照幸さんをコーディネーターに、学校現場を代表して兵庫県の見澤光徳さんと三重県の中川弘文さん、講演者の鳫咲子さんをパネリストに、「子どもの貧困」に関するパネルディスカッションを行った。まず、子どもの貧困の現状が現場でどのようにあらわれているかについて、2人のパネリストから報告された。様々な事情から居場所を見つけられない子どもたちや、家計を気にして部活動に参加できない子どもたちなど、経済格差によって子どもたちにもたらされた「貧困」の現状が浮き彫りになった。そして、コーディネーターが講演と報告を関連させながら、諸外国の状況をふまえて、何が「子どもの貧困」に影響しているのかについて問題の焦点化をはかった。フロアーからもたくさんの現状報告、質疑、意見を受け、さらに議論を深めることができた。
 
研究委員会報告書ダイジェスト版
2009-08-21
教職員労働国際比較研究委員会の報告書ダイジェスト版が完成しました。

報告書ダイジェスト版PDFダウンロード

インクルーシヴ研究委員会の報告書ダイジェスト版が完成しました。
 
第35回夜間公開講座「子どもの貧困と教育格差」
2009-06-26
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「子どもの貧困と教育格差~日本の不公平を考える~」

■2009年6月1日(月)18:30~20:30
  日本教育会館 7階 707会議室
  東京都千代田区一ツ橋2-6-2 TEL03-3230-2852(代表)
■主催:財団法人 日本教育会館
■後援:国民教育文化総合研究所
■講演者
   阿部 彩さん(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部第2室長)
 
 
  6月1日、財団法人日本教育会館主催で、国立社会保障・人口問題研究所の国際関係部第2室長である阿部彩さんの講演が行われた。
  まさに今、各方面から注目されるようになった『子どもの貧困』(岩波新書)の著者ということもあり、予想をはるかに上回る参加者があり、準備したレジュメを急いで増刷するほどであった。新聞社や放送局のスタッフの顔も多く見られた。

  講演 は、『子どもの貧困』に掲載されたデータを更新したものを数多く提示しながら、先進国と言われる、あるいは自認している日本の子どもたちがおかれている経済的社会的に厳しい状況を明らかにするものであった。つまり、子どもの貧困が「学力」、「健康」、「児童虐待」、「非行」、「疎外感」などとの相関関係が詳しいデータで明確にされたのである。

  そもそも「貧困」とは何か。阿部さんは「絶対的貧困」という考え方にたって「日本には貧困問題は存在しない」とする立場を批判しつつ、「人々がある社会の中で生活するためには、その社会の『通常』のレベルから一定距離以内の生活レベルが必要」という「相対的貧困」概念を使うべきとし、「母子世帯の貧困率が高いこと」、「政策による貧困削減効果が少ない」など国際的に比較した日本の問題も抉りだした。

  教育会館の主催ということもあり、貧困問題と教育保障の関係にも踏み込み、教育格差の是正には高等教育の無償化などが必要などといった提案も。最後のオバマ大統領の教育改革案やイングランドの「子ども貧困撲滅」政策にも触れつつ、「子どもの貧困撲滅のための11のステップ」を提言した。
その後、活発な質疑が行われ、今後ともこのテーマにかかわる公開講座への要望が強いことを確認して、会が閉ざれた。
1
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