教育総研は、教育・文化や教育運動のあり方について幅広い研究を積み重ね、同時に学校現場の課題を意識しながら、今日的視点にたった政策提言を行っています。

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活動報告

 

活動報告:2010年

活動報告:2010年
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「生徒の学習到達度調査(PISA)2009」の結果公表について
2010-12-07
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  新しい観点から作り上げられたヨーロッパ仕様の国際学力調査PISAは、ようやくすべての問題が新規のものに取り替わり、今回で第2巡目に入った。ところが、世界にはテスト対策をとり始めた国があり、わが国もその一つである。テスト準備をする国の存在で、スキルを測定するTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)とコンピテンシーを測定しようとするPISAの成績とが類似しつつあり(表1・2参照)、ランキングだけを見ればアジア諸国が上位を独占する勢いである。ヨーロッパが独自の学力観を確立して知のヨーロッパを構築しようとするPISAのもくろみが外れたと見るべきであろう。
  国際的な動向では、国家間の格差は縮まる傾向にあるが、国内格差は拡大しつつあるとOECDは分析している。PISA2009の特徴は、成績上位層の増減によって国の順位や得点が大きく左右されている点である。このことは、かなりの国にテスト準備教育が普及してPISA型テストに強い子どもたちが生み出されていることをうかがわせる(表3参照)。
  日本では、義務教育の成果が定着していない学力とみなされる成績下位層が少なくなり、このことは学校教育の成果と見なせるが、成績上位国に比べれば日本の「低学力」層の比率はまだ高く(表4参照)、さらに高校に進学していない者はこのデータから除外されていることを考えれば、いわゆる「底上げ」が日本にとって依然として大きな課題となっている。ちなみに、ヨーロッパ諸国では、教育制度の関係で義務教育期間にPISAを受験している。とりわけ、きめ細やかな指導で知られるフィンランドでは、今回この下位層が増えており、移民の増加などの原因が推測される。
  ただし、教育労働者の国際組織である「教育インターナショナル(EI)」は、強制的な補習など性急な「底上げ」という方法をとることについては反対しており、「学習困難な成績不振児に対してより過酷な教育方法がとられる恐れがあり、また教員に対するプレッシャーが強まることを懸念する」と表明している。学力向上には、子どもたちを競争させたり劣等感を植え付けたり自信をなくすような方法を避け、長期的に取り組む課題である。
  日本の推移を見ると、PISAとして新規に開発された「考える力」や「活用力」を測る問題によって一時的に学力低下したようにとらえられた(表5参照)。今回の調査では、読解力では改善が見られ、数学と科学についてはほぼ同じ成績となっている。現状を学力低下ととらえるかどうかよりも、今後日本が進むべき学力の質を問題にする必要がある。
  今回詳細に分析された読解力については、日本においては、勉学環境として「趣味で読書することはない」という項目が44.2%とPISA2000に比べて10.8%も減少したが、OECD平均の37.4%までは減っていない。また、「読書は、大好きな趣味の一つだ」が42.0%、「本の内容について人と話をするのが好きだ」が43.6%、「本屋や図書館に行くのは楽しい」が66.5%と、OECD平均のそれぞれ33.4、38.6、43.1に比べて高率であるが、実態と合っているかどうか疑問である。読む本の種類として「コミック(マンガ)」は、72.4%となっておりPISA2000に比べて11.5%減少したものの、OECD平均は24.3%であることを考えると、きわめて高率である。コンピュータや携帯によって「Eメールを読む」と答えた日本の子どもたちはOECD平均よりも高率である反面、「ネット上でチャットをする」「ネット上で討論会またはフォーラムに参加する」と答えた者はきわめて少数であり、日本の子どもたちの言語コミュニケーションが特定の狭い人間関係のなかで行われていることをうかがわせる。
  読解力について、日本でこの6年間にとられた対策は、フィンランド・メソッドやPISA型読解力指導というものであったが、形式的な問題解決学習や作文力養成を促すものになったり、量の拡大を図る画一的な読書活動の押しつけが目立っている。テスト準備教育よりは、一人ひとりの個人的な意志や生育歴に根ざしてことばの意味を深め、思考や想像力を広げ、創造力を培う教育を続けるべきである。このことについては、教育総研は詳しいレポートを作成中である。
  これまで4回行われたPISA調査によって、学校の授業という狭い範囲の対応ではなく学力向上には社会的・経済的・文化的な背景が大きく作用していることなど、成績と学習条件の関連性はある程度見えてきたが、どのような状態の子どもにはどのような教育を準備すべきかについてはまだ確たる因果関係は見えていない。「考える力」や「学び続ける力」、「活用力」を強調する調査であるがゆえに、テスト対策をすれば成績が上がるというような対処は避けるべきであろう。
 
第20回夏季研:第4分科会
2010-09-05
 
 
 
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第4分科会 「何でもアリ」の「キャリア教育」を再考する
コーディネーター:筒井美紀(法政大学)
 
 はじめにコーディネーターの筒井さんから、「キャリア教育」を考え直そうという分科会の趣旨と進め方の説明があり、参加者のグルーピングが行われた。
 
 
  まず、①「キャリア教育」の適齢期、②「キャリア教育」と進路指導、③「キャリア教育」と体験学習、④「キャリア教育」とジェンダー、という4つの「お題」が提示され、参加者は自分の興味関心のある「お題」でグループを作る。それぞれのグループで「お題」に関する「問い」を立て、議論をして「解」を見つける。今回は①3人②6人③6人④3人のグループができた。
  発表はグループ②から。「『キャリア教育』とは何か?」の問いから始まり、「『キャリア教育』は、『どんなふうに生きたいか』と『自己の適性は何か』を考えさせ、目的合理的に職業や進学先を選ばせることなのだろうか?」を議論した。導き出した解を図式化して発表。
  いかに人生楽しく、仲間とともに生きることが大事かというプラス思考を18歳の段階で伝えること。人権教育のようにプログラムを組んで、労働教育をカリキュラムかすることが必要であるという解を導き出した。
  つづいてグループ③は、「『キャリア教育』は『ボランティア体験』や『職場見学』など、何らかの実体験をともなわないと成り立たない/あるいは効果的ではないのだろうか?」という問いに対し、グループ②の図で、進路指導と労働教育の円が重なるようにし、その重なった部分の中の一部として位置づけられれば効果的ではないか、という解を出した。
  グループ①は、「『キャリア教育』はどの学校段階のどの学年から始めるのが適切なのか?」の問いに、働くことや責任感などを考えることは小学校段階でもでき、「キャリア教育」を「生きていく力を身につけること」とするなら高校で終わるものでもない。好きなことややりたいことを持っていることが大事ではないか、という解を発表した。
  グループ④は、「『キャリア教育』には女性特有の課題があるのではないか?」「ジェンダー意識はいつ再生産されるか?」という問いに、女性には機会も期待もない、ロールモデルが少ないという課題がある。誰かにとって男女が分けられているほうが都合がいいのではないか、分けていればトラブルもない。しかし、トラブルがあった時の解決策を身につけさせたり、現実や権利について子どもが考えるカリキュラムづくりが必要である、という解を出した。
  全体の討議で、「学校でキャリア教育がすすまないことはかえって健全ではないか」という意見が出された。いかに生きるかを考えることは必要であるが、大合唱のタクトを振る人の意図に胡散臭さを感じる。筒井さんからも、「キャリア教育の危うさ」として、次の3点が指摘された。
 
 
① 労働市場での成功にゴールを収斂させる「磁気」。それは、フリーターにさせない教育こそ肝心だといった考え方と、「失敗」した人を自己責任論によって非難する風潮を強める。
② すべてが「将来のため」になりがちで、「いま・ここを楽しむこと」が形骸化する。将来のために今やることを考えて実行するのは大事だが、それだけの人間形成などあり得ない。
③ 今の「キャリア教育」は、「自分はどんな仕事に向いているか」という適性から「どんな生き方をするか」を考えさせるもので、「個人(わたし)」に終始し(右図下部)、社会の次元が欠けている。だから子どもたちに必要なのは、「社会のしくみを知り、すべての人が生きやすい社会にするにはどうしたらいいかを考えること」である。そのため教員には「キャリア教育」の解体的理解と限定的活用が必要だ。
  以上の筒井さんの話に、参加者は新たな視点を与えられた。
 
第20回夏季研:第3分科会
2010-09-04
第3分科会 「6・3・3制の見直しをめぐる動きをどう考えるか」
コーディネーター:広田照幸(日本大学)、青木純一(東京都市大学)
 
 第3分科会では、昨年度より活動する6・3・3研究委員会の成果を報告するとともに、参加者との意見交換を通して6・3・3制を見直す際の基本視座や課題を整理することを目的とした。
前半は広田さんが「6・3・3制となにか」をテーマに報告した。広田さんは、6・3・3制の誕生から現在までを歴史的に整理し、「6・3・3」制の学年区分には必然性がないことを明らかにした。さらに、こだわるべきは「6・3」の区分ではなく、「教育を受ける権利と教育の機会均等」であると訴えた。また、理念から距離を置く様々な現実には個別に対応する必要があることを強調した。
  広田さんの報告を受けて、参加者から以下のような意見や課題が示された。たとえば、「課程主義(修得主義)と年齢主義(履修主義)との対立する考え方についての方向をはっきりすべき」「単位制高校や総合学科は機会均等の理念を実現するのに有効」「中退者や学習困難者に対するきちんとした学習保障の取り組みを」「6・3・3制をめぐっては私立学校の位置づけを明確に」等である。
  後半は青木さんが「小中一貫教育の効果と課題」をテーマに、この10年間の小中一貫教育の取り組みについて報告した。青木さんは小中一貫教育を大きく、①研究先進校(呉市や品川区)の動き、②教育特区の動き、③教育課程特例校の動きに分けて分析した。
  その結果、小中一貫教育の特徴として、青木さんは「エビデンスが不在であること」「英語活動に偏りすぎていること」「地域格差や学力格差の危険があること」「校区の適正規模に配慮した一貫教育が増えつつあること」などを指摘した。
  参加者からは「品川区の市民は一貫教育を好意的に受入れている」「一貫教育はこれ以上拡大する可能性は薄い」「就学前教育も巻き込んだ一貫教育になる可能性がある」などの意見が出された。参加者は少なかったが、有益な話合いであった。
 
第20回夏季研:第2分科会
2010-09-03
第2分科会 「教員養成の思想と制度」
コーディネーター:福田誠治(都留文科大学)、池田賢市(中央大学)
 
 
1.外国にみる教員養成制度の実態
  はじめに、福田誠治さんから、世界の教員養成改革の動向、ヨーロッパの教員養成制度に関する課題提起があった。
  ヨーロッパは、国境を越えてアメリカ型を見ながらヨーロッパスタイルにした。ボローニャ・プロセスに合わせ、教員養成は、大学教育+1年に匹敵する単位習得(大学院相当)制度、すなわち4~5年の制度に加盟国全体で制度化された。ECTS(欧州単位互換制度)に基づくクレジットポイント。取得した単位は、記録され修了証に記載される。1年に60クレジットの取得が標準になって在籍年数・学修課程が構成されている。参加している国の大学はどこでも使える制度。中でも大きく変化したのは、ドイツで、古いスタイルとクレジット制が混在していて、現在切り替え途中である。ヨーロッパの大学全体がアメリカ型を導入しながら、共同して生き残ろうとしている。このような変化は、産業と社会の高度化に対応できるように大学進学率を増大させる必要があり、国家財政で維持されてきた大学を拡大し、そのためには市場経済的な競争原理を導入せざるを得ないと各国が判断したことである。
  日本は、戦後、アメリカの大学・就職制度を見習ってきた。このような制度は、日本の他には、OECD調査ではアメリカ、イスラエル、韓国である。日本の大学は、単位制を敷くものの、何を教育するかは大学に任されていたと言える。アメリカ的な制度を取り入れながらも、現実にあうように、それぞれの大学が抱えた目の前の学生に合うように、授業も教育全体も作り直していた。それが、郵政改革と同様、国立大学は独立行政法人化され、米英金融界の主導する競争原理が導入されてきた。そして、外部評価、学生評価などの授業評価の導入、授業内容をシラバスとして事前公開など、授業選択、説明責任、授業評価を行うなど、急速に変わろうとしている。
  次に、イギリス(主としてイングランド)、フランス、フィンランド、デンマークなどヨーロッパ各国の教員制度が報告された。イギリスは、高等教育機関の養成から、学校現場中心の養成に変化してきている。イギリス・フランス・ドイツには、免許更新制はなく終身有効である。
  以上のような提起を受け、会場からは大学入試制度について、中長期的な教員不足の状況はないのかなどの質疑が寄せられた。福田さんからは、ヨーロッパスタイルでは大学に入る前に、17、18歳で一般教養を修了するとする中等教育制度の修了資格(国家試験)が大学入試に使われる。 世界の流れは国境を越えている。日本もそういうことが起こる可能性は否定できないとの話だった。

2.民主党の教員免許の改革について 
  池田さんから以前に出された民主党の法案をもとに課題が提起された。民主党の教育政策では、①教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、②学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案、③地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案が柱となっている。①では、教員の専門性をどう考えるのか議論になるところである。学校現場の問題がどうして教員養成課程を6年にするのか、そうすれば解決するのか。現在、大学では、教員養成カリキュラムに「教職実践演習」が導入されている。「教職実践演習」は、中教審の議論を経て、省令により2010年度の大学入学から2単位の新設科目として履修することが必要になった。目的は、教員として必要な知識技能を修得したことを確認するもので、免許状授与の段階で教員としての適格性を判定するための制度的担保とされている。大学にいるときに適性を判断するという発想は、現場に入って同僚の教員たちとのかかわりの中で鍛えられ成長するという視点の欠如を意味している。また、授業内容や履修カルテ(評価・評定の方法)にも問題があるとしている。教育実習演習は、免許更新制と深く関連していること、教員養成にかかわる改革は十分、検討していくことが必要である。

  3.何が問題になっているか、教員養成制度の展望
  アメリカが第二次世界大戦後、一貫して追及し、主導してきたのは、貿易の自由化であり、そこには、投資、金融のみならず、各種サービス業も入り、技術、知的所有権、教育などが含まれる。グローバル化が進展し、教育政策で言えば、教育費の削減、規制緩和、教育の民営化という方針が出された。「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」の目的は、サービスと見なせるあらゆる行為を国際的にすべて自由化することにあり、あらゆる教育行為がすべてサービス業として位置づけられている。義務教育部分をさす「基礎教育」さえ潜在的教育市場から排除されないとしている。そして、教育をビジネスにするために、値段を付ける(数値化)、教育が必要かどうかではなく、商品になるかどうかが問題とされる。新自由主義者は価値観をだれが持つかは市場に任せている。そういった意味では、彼らは思想をもたない。これが現在の国際社会である。現代の「知識基盤社会」では、固定的な教育制度、マニュアル通りの伝達、固定的な知識・技能の習得では対応できない。個人の能力を伸ばし、創造性や企画力・計画遂行能力を育成し、生涯学習として学び続けるには、学校教育のあり方を変更せざるを得ない。教員に求められる力は、個々人に適した授業の工夫、創造する能力である。学問的に裏付けられた知識理解、授業として表現し実現する技能、探求し続ける力を育成することが教員養成制度の目的となる。現実的な案として3つのケースが紹介された。教員は、長期的に人を育てるのが仕事であり、教員の専門性、仕事をつきつめて論理を組み立てていくことが重要である。

  休憩後の意見交換では、参加者から次のような発言があった。
○ 教員の資質向上の制度を整備することで、免許更新制度は廃止することが重要だ。自分も受講してきたが、官製研修と更新講習の違いがわからない。現職の研修と曖昧なままではないだろうか。自己負担を強いられ、根本論議が必要である。日本はどこに向かおうとしているか、ビジョンが必要である。民主党案の③が気になるところ。学力調査の結果など、首長の教育観の違いが大きく影響してくるのではないかと危惧している。
○ ある都市の採用試験では、倍率がさがったからおもしろい教員がでてきているという話を聞いた。倍率が高くなれば質があがるのか。なぜ、教育各部が生まれたのか、開放制と統合制、そのものが形としてあってもこの間の教員免許法の改正で崩れている。提言では、開放制、統合制、教育学部がめざしてきたものをきちんと押さえるべきだ。
○ 6年制では、教員になる人が減るのではないか。免許・養成に関する、学力調査も含めて社会、保護者へどう伝えるか。オープンに市民と話せるものが持てたらと思う。
○ なぜ、その制度が必要なのか。ベテランの教員が楽しく、健康で生き生きと誇りを持って子どもに向かっているのか。現場は、評価制度や個別状況もあり声に出せない状況。現実に立って方針を立てるべき。
○ 第1ステージ、免許更新制を受講した人の免許状は、平成33年3月31日までの期限付き。今後、もらった人はどうなるのか。
など、活発に議論された。

  最後に、福田さん、池田さんは次のようにまとめた。
○ 戦後の開放制、統合制の意味は大きい。教える背景にあるものの根本を教えるのが大学である。みんな同じ力を持ってというのが無理なことであり、知識を構成していく、学び方を学ぶのが大学の役割である。今、大学はものすごい勢いで変わってきている。長い目で、人間を育てる、学びを支援するのが教員の仕事であるという論理をつくっていく必要がある。日本の向かうべき道は、こっちだろうとシュライヒィアーは言っている。(教育と文化60号)立ち止まってみんなで考える時間が必要である。OECDのタリス調査(日本は参加していない)は、教員を対象の調査であり、自らが探して議論して得たものがその人の知識となり、最も指導力のある教員といえる。日本は、高度経済成長期の教育で行き詰っている。知的に創造的に学びを追求していくべき。
○ 世論を認識させるのは、難しい。教員の資質とは何なのか、こまめに保護者と話していくことが必要では。期限付きの免許状については、不利益がないようにしなければならない。政治情勢に影響してくるだろう。教育を消費者としてではなく、生産者として創りあげていく視点が重要である。
 
第20回夏季研:第1分科会
2010-09-02
第1分科会 「スクールソーシャルワーカー導入の現状と課題」
コーディネーター:嶺井正也(専修大学)、石井小夜子(弁護士)
 
 まず、コーディネーターの嶺井先生から「この分科会が『学校と地域』の連携を課題としており、今や地域と学校連携の質的充実が迫られている。そうした視点を含めスクールソーシャルワーカー(SSW)を考えてほしい」と問題提起をし、石井さんからは、SSWの導入の現状と課題が以下のように述べられた。

***
  スクールソーシャルワークとは、学校を基盤とし、様々な困難に直面している子どもたちを、ソーシャルワーク(SW)の手法に基づいて支援するシステム。2008年4月文部科学省の調査事業としてSSW事業が開始され、2009年度からはそれが「学校・家庭・地域の連携協力推進」として自治体の事業に位置づけられ、国の補助が30%、地方負担が70%で2009年の人員配置は600人措置された。
  スクールカウンセラー(SC)があるのに、「なぜ、SSWを導入するのか」。SCは子どもの内面(心理)に焦点を当て、主に相談室内で問題解決が図られるが、SSWは子どもを取り巻く環境(親・学校・友達・地域等)の相互関係に焦点を当てて、不適合状態の調整に関与することで問題解決が図られるようにしている。今日の子どもが抱える困難は社会環境や社会構造と深くかかわっており、SCだけでは問題解決にはならないのではないか。
  SSWは、子どもの最善の利益実現のために、子どもの側に立って解決するための支援活動で、活動の基本姿勢は、一人ひとりの子どもの人格尊重を基にして、水平関係を築く「パートナーシップ」である。SSWでは、子どもと対等な関係を持ち、子どもの自己評価の回復と自身の持っている力を発揮することを支援し、SSWが問題解決の代行者となるのではなく当事者である子ども自身が主体になって不適合状態の軽減を図っていくものである。
  しかし、SSWの考え方や理念及び役割が学校現場でほとんど知らされていない状況のまま導入されたため、さまざまな混乱を生じさせているようだ。理念のないSSWは、「学校という組織における教育活動を円滑に行なうための補完的な役割を担うもの」になってしまい、それでは逆に、「子どもの力を邪魔するもの」となっているとの指摘がされている。
***

  これらの問題提起を受け、現にSSWが配置されている地区からの現状報告がされた。

  今回、SSWそのものについて熟知しておらず、この制度の内容、地域や学校ではどのように活用されているか、などを学びたいという参加者が多かったが、分科会後半には以下のような意見・感想が述べられた。

○子ども虐待などで地域にゆるやかなネットワークづくりができており、そのなかにSSWが入ることによりネットワークが広がり、地域のいろいろな人たちに支援してもらうシステムが必要。

○学級担任の経験からすれば子どものおかれている環境が厳しくなっており、SSWが配置されていれば民生委員や地域との連携がより高まるのではないか。

○SSWには臨床心理士などがなっているが、アメリカのように養成課程が必要ではないか。

○地域や学校をめぐる課題が複雑になり錯綜している中で教員だけで対応するには限界がある。学校にも多様な教職員がおりそれぞれの役割が発揮できるようにすべきで、SSWをきちっと位置づけることが必要だ。

  スクールソーシャルワーカー導入の現状について、学校現場はもちろん地域でもその存在を理解していない。参加者の多くは、この分科会を通し、SSW制度を定着し、広げていくことの重要性を認識した。
 
第20回夏季研:シンポジウム
2010-09-01
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第20回教育総研夏季研究集会
シンポジウム「教育を中心とする持続可能な社会実現に向けて」

コーディネーター : 小川 正人 (放送大学)
パネリスト: 広田 照幸 (日本大学)
                    桜井 智恵子 (大阪大谷大学)
                    松浦 司 (中央大学)
                    岩澤 貴子 (小学校教員)
 
  最初に、小川正人さんよりシンポジウムの趣旨と課題が次のように述べられた。「この1年、子育て支援や教育の家計負担軽減で子ども手当、高校授業料無償などが実施されたが、経済困窮家庭への修学支援の課題や教育と福祉の関係再構成など多くの課題が残されている。現在、教育関係では35人学級に向けた予算編成に入ろうとしており、教員の資質能力向上では教員養成が中教審に諮問され審議がスタートしたばかりである。しかし、先の参議院選挙の結果により政治基盤が脆弱化し、財政支出の増加が見込まれる教育政策の進展が難しくなる可能性も懸念される。今後教育政策に関しては 野党の対応如何によっては政策展開が変わる可能性など不透明、流動性が高まっていることは否めない。」
  その後、設定されたテーマ毎に、教育総研に本年4月に設置された「教育行財政改革をすすめるための有識者会議」での検討内容などを簡単に説明し問題を整理したうえで、各パネラーからそれら課題への意見を10分以内で述べてもらった。


「子育て支援、子ども手当、高校授業料無償化などと関係する教育と福祉の費用負担の在り方」
◎ 子ども手当てが支給されたものの、依然として給食費の滞納、修学旅行費の未納が子どもたちの教育に影響している問題や、高校の授業料の無償化についても、塾に行ける子どもは高校進学の選択肢が広がっているももの、塾にも行けない子どもたちにとって多くの場合経済的に私学にも通えない実態がある。それをふまえ行政をすすめてほしい。
◎ 今の学校はバラバラになっている感じを受ける。時間に追われ教職員が子どもと向き合う時間が少なくなっており、ベテランの先生も保護者との対応に十分時間を割くことができず、その結果トラブルが生じ疲れている。今の学校の実情を考えると、憲法で定めている生きることの重要性、労働の在り方などを追求していかないと教育は良くならないのではないか。子ども手当も経済的効果のみが強調されているが、保護者の消費者意識を変えないと子育て支援にはつながらないのではないか。
◎ 今の日本の少子・高齢化社会の現状をふまえ日本の未来を考えたとき、教育について経済的側面から分析・追求することが必要ではないか。このままでは人口減少によって労働者数が減少し、高齢化により貯蓄率が低下して資本蓄積が妨げられる。そこで、教育投資を行うことによって生産性を高め、技術進歩率を向上させることが必要。教育投資の経済的効果は、社会にとって経済成長と人的資本の確保、個人にとって家計の教育費負担を軽減させ出生率向上にも役立つ。用途を決めない子ども手当より公教育の充実等により教育費を低くしたほうが出生率に影響を及ぼすと思う。
◎ 今の日本の財政状況は、教育にお金を、と主張しても900兆円にも上る財政赤字の中でなかなか現実化しない。「政治主導」も揺らぎ、これからは「伝統的な大きな政府ではなく、官僚制の病理を克服し、市場活力と共存できるような洗練された政策が必要」と指摘されてきたがそうなっていない。教育の世界も官僚制にならされており克服するには保護者と連携した新しい教職の「専門性」を考える必要がある。同時に多様な教育モデルを学習し、「多様な価値観を認める民主主義を使いこなせる市民」を育てるなど、教職員自身が自ら社会の価値の多元性に目を向ける知識人になってほしい。
◎ 子ども手当について文科省の副大臣は、福祉ではなく子どもの潜在性を生かすベーシックカムと言っているがあらためて議論する必要がある。教育と福祉の関係については「有識者会議」の中で見直し、再構築していくが財源措置をどうすべきかが大きな課題になる。日本の教育費は公費と私費を含めるとスウェーデンと同じような額になる。公費と私費の組み替えることによってどのような効果が生じるのか、それらも提起すべきである。
 
 
「教員免許更新制・教員養成」
◎ 教員の養成は多くの子どもたちや保護者とのつながり、教職員間による課題への対応や連携など同僚性によって教職員一人ひとりの器が大きくなってきた。そのことからも教職員は「学校現場」という関係性の中で育っていくが、今は学校での課題や悩みが「免許更新制」という自己責任に結びついているのではないか。
◎ 率直に言って教員の免許更新性のしくみは、「非正規職員」と同じようである。学校では新しい様々な課題に対応するための打ち合わせや研修が増え、それに追われている。多忙化の中で免許更新のための講習などを受けたが身につきにくい。大学院卒として6年間の教員養成期間が提起されているが、教員希望者が減少し教員不足の時代になるのではないか。学校は様々な環境で育って子どもがおり、時には想像できないような行動をする。教職員も多様な先生がいて、子どもとのコミュニケーションがとれるような教職員集団が必要だ。
◎ 90年代から多くの企業が人事労務管理として成果主義を取り入れてきた。それまでの日本の人事管理は一人の上司ですべてを決めるより多くの上司が多面的に見て評価するなどゆっくりとした評価制度が取り入れられてきた。成果主義はある条件をクリアすれば抜擢する人事を可能としてきたが、社員の不満が高まり失敗したケースが多い。教員の免許更新制もそれのみをクリアすれば、という教員を生み出しかねないので企業と同じ轍をふまないか心配している。
◎ 免許更新制は多くのも問題があることで共通理解に達しているが、社会・世間がどう思っているか。教育にとって何が妥当なのか。教員は5~6年も経験すれば問題意識や課題をかかえるようになり、学校現場だけの経験で対応するには限界がある。そうした時に大学院で専門的な知識や対応策などを学ぶことができるシステムを導入する、そうした方法であれば意義がある。
◎ 文科省は、教員養成についていろいろ意見を聞いており、今の段階で確固たる方針を意思統一していない。中にはかつての師範学校の再生をイメージしたり、教員が「学校現場で育つ」にはどう条件整備をすべきか、などの意見が出されているが、この問題は中教審で議論しているのでそれに影響を与えるような提言を発することが重要である。

  こうした意見に対し、参加者から意見を求めた。出された主なものは以下のとおりである。
・「教員は現場で育つ」は、かつてゆとりがあった時代だからこそ可能であったが、今日の多忙化と教員のレベルアップは並立が可能なのか。
・「教員は現場で育つ」ばかりでなく、新しい視点、多様性に応じていく力を身につけるという話には共感を覚えるが、教員はどこで育つかは難しい。
・教員養成について大学院卒の養成課程が提起されているが、医師みたいに6年間かけて教員になるだけの魅力が教職員の職場にあるのか疑問に思う、人材不足になるのではないか。
・教員養成課程の4年+αは、現行の初任者研修又は臨時採用教員に近いもので給料も出るが、学級担任もするなど責任を伴うものになると思うが、そしてこれらが定数外として配置されるなら考える価値があるのではないか。
・公立学校の教員はこれまでにも「福祉」の面も担ってきたが、これからは一層厳しい家庭状況の子どもが増えることは間違いない。格差の再生産を少しでも食い止め、教員をつぶさないため、公教育を見直し、教育と福祉が連携していくためのシステムづくりなど今すぐにしなければならない。
・新自由主義など競争主義的な教育は、教育政策そのものを変えない限り難しい。文科省も変えようとしているのか、先般国連の子どもの権利委員会から日本の教育の過度な競争に対して留意するような勧告があったが、このことに対して全く反応がないのは何故か。

  これらの質疑などに対し、パネリストから意見が述べられ、シンポジウムは有意義なもとに終了した。(設定時間の関係で、一般参加者の発言を制約せざるを得なかったことは反省材料として次回にいかしたい。)
 
第20回教育総研夏季研究集会&第13回教育研究所交流集会
2010-09-01
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開催日程:
2010年8月18日13:30~17:30 夏季研究集会 全体会
                          18:00~20:00 夏季研究集会 懇親会
          8月19日 9:00~12:00 夏季研究集会 分科会
                          13:20~16:00 教育研究所交流集会

開催地及び会場:
神奈川県横浜市 ホテルモントレ横浜
 
 
☆全体会
   まず、高橋副理事長より開会あいさつ、なたにや参議院議員より来賓あいさつ、嶺井所長より教育総研の活動報告、六‐三‐三教育制度研究委員会の広田委員長より委員会の報告を受けた。
   次に、「教育を中心とする持続可能な社会実現に向けて」をテーマにシンポジウムを行った。コーディネーターとして放送大学の小川正人先生、パネリストとして日本大学の広田照幸先生、大阪大谷大学の桜井智恵子先生、中央大学の松浦司先生、教職員代表として岩澤貴子さんをお招きした。①子育て支援、子ども手当、高校授業料無償化などに関係する教育と福祉の費用負担のあり方について、②教員免許更新制と教員養成のあり方について、それぞれの立場からの情勢分析や見解を提示してもらい、会場からの質疑や意見を受けた。


シンポジウム「教育を中心とする持続可能な社会の実現に向けて」


☆分科会
第1分科会 「スクールソーシャルワーカー導入の現状と課題」
第2分科会 「教員養成の制度と思想」
第3分科会 「6・3・3制見直しをめぐる動きをどう考えるか」
第4分科会 「『何でもアリ』の『キャリア教育』を再考する」
 
 
☆研究所交流集会
まず、嶺井所長より開会あいさつを受けた。次に、神奈川県教育文化研究所の芹沢副所長より、主に組織の成り立ちと運営についての報告を受け、新潟教育総合研究センターの山本事務局次長より、イギリスで行われた調査「学力テスト廃止でよみがえるウェールズの教育」の研究報告を受けた。
その後、それぞれの教育研究所の調査研究や抱えている課題についての情報・意見交換を行った。特に、報告書を作成してもなかなか活用されない現状に対し、どの研究所も「いかにして情報を発信していくか」に苦悩している様子が伺えた。
 
教育インターナショナル「リサーチネットワーク会議 報告
2010-07-01
開催:2010年6月14-15日
場所:ソンホテル・ブリュッセルシティセンター/ベルギー

議事次第
(1) EIの主要研究活動についての報告
(2) 経済危機後の教育:次には何が? (教育における経済危機の影響について)
(3) 教員のリーダーシップ
(4) 新しいとりくみ方法:大学や研究所との協力
(5) 教職員の労働条件-国際比較研究 (総研)
(6) EIとPISA:建設的な批判から批判的な参加へ
(7) 教育改革における労働組合の役割:教員の成果(パフォーマンス)と効果(エフェクテイヴネス)
(8) 新しいプロジェクトの始動
(9) まとめと今後のとりくみについて

内容
(1) EIの主要研究活動についての報告
① 調査研究:「教え方の学習:アフリカ・サハラ以南における無資格小学校教員の昇格」
② 調査研究:「OECD諸国における難民や亡命者の子どもたちのための教育機会」
③ 教育における国際経済危機の影響に関する追跡調査
④ 2010-2011年調査研究:中国の教育
⑤ PISA(生徒の学習到達度調査)
⑥ TALIS(教員・教授・学習に関する調査)
⑦ CEART(ILO/ユネスコ教職員勧告適用合同専門委員会)に対するEI報告
⑧ 技術報告:矯正施設での教育
⑨ 報告:幼児教育
⑩ EI記録:EFA(万人のための教育)国際モニタリング調査報告2010
⑪ 調査プロジェクト:中欧及び東欧における国際経済危機の影響を算定する
⑫ 調査プロジェクト:福祉としての教育-ヨーロッパにおける社会的弱者である若者への機会を向上させる
⑬ 調査研究:「公平性の問題」
⑭ 調査プロジェクト:アムステルダム大学との共同研究(教育改革、教育と国際経済危機)
⑮ プロジェクト提案:2010年人文社会科学でのEU FP7(欧州連合第7次研究枠組み計画)の要請
⑯ プロジェクト提案:法人税と質の高い公共サービス

(2) 経済危機後の教育:次には何が? (教育における経済危機の影響について)
2008年末の国際経済危機からEIは教育における影響を追跡調査してきた。教育予算あるいは教員の賃金労働条件はどのような影響があるか、組合はどのような対応をし、今後どのような計画があるのか等について調査した。
外国資本に頼る小国では金融危機の影響が強く、東欧などでは、公費が削減され、教育部門でも賃金引き下げ、新規雇用凍結などが行われている。アイルランドとアイスランドを除き、西欧諸国では比較的影響は少ない。フランス、ドイツ、イギリスでは公共投資のための公債を増やし、教育投資を増やすことを通知している。他の国においても、政府は教育を復興戦略に位置づけて投資しており、例えば、ノルウェーやスウェーデンは高等教育へ投資を行った。北アメリカも西欧と似たような状況で、(地方分権型の)アメリカ合衆国は、教育への投資を含めた景気刺激策を逸早く打ち立てたが、多くの州は歳入不足により教育予算の削減や一時解雇を行っている。カナダの教職員組合は、教育予算削減により、一時解雇や学級規模の拡大、団体交渉への政府介入などが行われる可能性があることを懸念している。
全ての地域で、学校の統廃合、教科やカリキュラムの削減などが報告されているが、経済危機を直接的原因として行われているかは定かでない。しかし、削減される科目は、外国語やカウンセリングなどで、その設備には経費がかさむからだと考えられる。
EFA(万人のための教育)の達成は経済危機によってますます危ぶまれている。OECD加盟諸国の教職員組合は、自国の公共部門を保護するだけでなく、他国への支援の約束を保持するよう政府に働きかけることが重要である。
政府に公費削減の圧力がかかる中、教職員組合は、未来への投資として、継続した教育の公的投資を求めていく必要がある。

(3) 教員のリーダーシップ(ケンブリッジ大学教育学部の協同研究)
これまでの学校リーダーシップの研究では、教員の専門的自立性や自信の程度は協力協同の教職文化を築く学校のリーダー達の能力に拠るところが大きいことが分かった。これまでのリーダーというのは、一部の教員に責任をあたえるポストとされる傾向があった。あらゆる教員が力量向上させる能力としてのリーダーシップという概念はなく、組織の階層の中に位置づけられていた。多くの場面で教員の独創的で革新的な能力が認識されることはなく、未開発の状態にある。教職員組合にとっての優先課題は、組合員の自信、専門的知識、そして自己効果を高めることにある。このプロジェクトの目的は、教員がリーダーシップを発揮するためのサポート体制を開発して教員の専門職意識を高めることと、このプロジェクトが教育改革にどのように貢献することができるかを模索することにある。
EI加盟組織にアンケート調査を行った結果、有益な情報を得ることができた。教員がリーダーシップを発揮する訓練をし、方針に影響を与え、教育実践を形づくり、専門的知識を構築するためには、現在の学校内の環境や機会がどんなものであるかがもっと分かるようになった。この調査の重要一面として、他の学校やより広い地域と輪を広げていくことができる可能性を得られたことがあげられる。
この活動により、教員の専門職意識を開発し高める支援をする機会と戦略を広げることができた。

(4) 新しいとりくみ方法:大学や研究所との協力(アムステルダム大学との共同研究)
ここでは、イギリスのエクスター大学での「公平性の問題(Equity Matters)」について報告を受けた。
教育における公平性には2つの側面があり、ひとつは公平で公正であること。もうひとつは、インクルージョン(包括的)であること。公平性の問題に影響をもたらす要因として、グローバル化と多様性があげられる。
プロジェクトの目的:公教育制度において、「万人のための質の高い教育」を達成するために行われている公平政策の関係性をとらえる。
アンケート項目:①教職員組合は教育における公平性をどのように概念化しているか。②それらの概念は、実践や政策の中で、どのように運用されているか。③公平性の概念に関連して、教員にとってどのような問題があるか。④EIは、公平性に関する国際的な議論に対し、どのような貢献をすることができるか。
上記のアンケートはEI加盟組織を通じて行う。この研究結果を今後、EIの政策や活動の方向性に活かしていく。

(5) 教職員の労働条件-国際比較研究 (総研)
2007-2008年度に教育総研が日教組の委託研究として行った「教職員労働国際比較研究」の報告を行った。
イングランド、スコットランド、フィンランドと比較し、日本の教職員の労働時間は長く休憩時間がとても短いこと、授業準備をする時間が少なくペーパーワークが多くこと、帰宅時間が遅く休みが取りづらいこと、仕事量が多く自信が持てない状況にあることなどを、パワーポイントを用いながら説明した。
出された質問は次のとおり:この結果を発表したときの反響はどうであったのか。他の職業でも同じような状況にあるのか。この結果を受けて、団体交渉などのとりくみを行ったのかどうか。子どもたちはどのくらい学校で勉強しているのか。日本の教員はいつ専門性開発(研修など)を行っているのか。他
出された意見は次のとおり:きちんと休みをとらないといくら働いても効率的ではない。能力も発揮できないのではないか。労働組合としてワークライフバランスを考えた働き方をすすめていく必要があるのではないか。CEART勧告を用いたらどうか。他


(6) EIとPISA:建設的な批判から批判的な参加へ
2000年に初めて行われたPISA(生徒の学習到達度調査)は、2003年、2006年、2009年にも実施され、今年12月7日(火)に2009年度調査の結果が公表される。
EIのメディア分析(2008年)によると、PISA2006について、各国メディアは、40%が簡単にふれる程度で、29%がランキングを引用している。また、27%が教育改革を求め、3%がPISA調査の目的などを説明し、2%が低い結果に対する教員責任を追求している。こういった状況の中、EIはTUAC(労働組合諮問委員会)での意見反映につとめ、EI加盟組織と連携し、PISA調査結果が報告されるまえにコピーを入手し分析につとめている。また、PISAの政府会議にも参加している。
PISA調査に関し、EIは以下のことを提案する。
教員の参加 → 長期的なデータの活用 → 成績順位一覧の活用方法の改善
→公平性の促進に再注目 → 社会科学を含む教科の拡大 → 健全上のリスクの警告
PISA2009の主要項目は読解力である。また、GDP成長率、移民(難民)の子どもたち、ナショナルカリキュラムなどに関連づけて分先されている。
また、TALIS(教員・教授・学習に関する調査)の結果とPISA調査の結果とが関連付けられた議論がなされる懸念もあり、警戒している。
尚、12月7日(火)の公表に先立ち、EIより加盟組織へデータと分析が送られる。(12月3日を予定)また、公表の約3週間前のTUAC会議では、PISA2009に関する傾向や主要課題についての議論がなされる。

(7) 教育改革における労働組合の役割:教員の成果と効果
教員の成果と効果の評価方法に対する対応策について議論がなされた。
効率や効果というものは、教育に限らず、公共部門全般において、今日的要求となっている。しかし、教育分野において、その評価は難しく、単純に、子どもたちの成績(テストの結果)によって、全ての教育の成果が分かるものではなく、また、教員の評価は、子どもたちの学習に影響する全ての要因となるものではない。
教育の評価に関するOECDの最近の調査では次のような傾向が見られる。
① 教育の成果を計るものさしとして、PISAや類似の標準テストへ注目
② 客観的に数量化でき、計測できるような教授、過程
③ 教育の質を計る指標としての教員評価
こういったアプローチでは、質の高い教育というものを正しくとらえることはできず、教育政策に誤った形で参照される懸念がある。EIは、教育の質や効果について、公平で公正な評価をするための要素がどんなものであるかを明らかにするための独自調査研究を行う。そのため、加盟組織にアンケート調査を行った上で、現地視察を行う。また、PISA2009の統計的分析とTALISとの相互関係を調査する。

(8) 新しいプロジェクトの始動 (2010-2011)
・ 教育における効果に関する研究
・ PISAとTALISとの関連に関する机上研究
・ 「将来的な質の高い公共サービス」についての調査研究
・ 国際的な教員のリーダーシップに関する調査研究(ケンブリッジ大学と共同)
・ 南アジア及び東南アジアにおける無資格教員のための教育に関する研究
 
「子育て支援・学びの保障」の充実に向けて
2010-06-30
教育行財政改革を進めるための有識者会議 提言

「子育て支援・学びの保障」の充実に向けて
 
第38回夜間公開講座『「キャリア教育」には何が足りないのか?』
2010-06-08
「キャリア教育」には何が足りないのか?
-「社会学的労働教育」の必要性-

■2010年6月21日(月)18:00~20:00
   日本教育会館 8階 第3会議室
   東京都千代田区一ツ橋2-6-2 TEL03-3230-2852(代表)
■主催:財団法人 日本教育会館
■後援:国民教育文化総合研究所
■講演者
   筒井美紀さん (法政大学キャリアデザイン学部教員)
■入場無料 申込不要

  「過労死するなんてバカみたい。自分のことが分かっていないのだ」「三流大学にしか入れず日雇い派遣?そんなの、勉強しなかった本人が悪い」。
  最近、社会学の授業ではこうした大学生の反応が少なくありません。その表現のどぎつさと想像力の欠如に背筋が寒くなります。社会の将来を考えると、危惧を抱きます。いわゆる「キャリア教育」だけでは、このような自己責任論を強めこそすれ、解除はしないでしょう。
  では、労働者の権利を知り、労働トラブルに対処できる力をつけようという「労働教育」で補完すれば充分でしょうか?否。なぜなら「労働教育」は、下手すると、自分さえ助かればよい、という受け取り方を許容しかねないからです。不可欠なのは「社会学的労働教育」ではないか?ということを、ご一緒に考えてみたいと思います。
 
には何が足りないのか?』
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