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活動報告:2007年

第29回「日本の伝統・文化って?? PART 3」
2007-08-02
■2007年8月2日(木)18:00〜
   日本教育会館 8階 第2会議室
   東京都千代田区一ツ橋2-6-2 TEL.03-3230-0564
■主催:国民教育文化総合研究所
■共催:平和・人権・民主主義の教育の危機に立ち上がる会
            財団法人 日本教育会館
■報告
    アジアはどう見ているか
    王敏(ワン・ミン)(法政大学)

2007年8月2日、第29回教育総研公開研究会が行なわれた。テーマは「日本の伝統・文化って?? PART3 アジアはどう見てるか」。講師は王敏(ワン・ミン)さん(法政大学)。

昨年の教育基本法改悪の先取りとなっている東京都の「日本の伝統・文化理解教育」などで取り上げられている「日本の伝統・文化」とは何か、どこに問題があるのかを、これまで2回にわたって考えてきた。そもそも「日本」という言葉や意識が人々に浸透したのはいつの頃からか、いわゆる日本の伝統といわれるものの多くが明治時代に天皇制国家の形成過程でまとめ上げられたものではないのか、といった論点が報告者から提起されてきた。今回は、生活文化を基礎として「日本の文化力」を語っている王敏さんに、「日本の文化」はアジアからどう見られているのかを話していただいた。

王敏さんは、生活文化を基盤とした比較文化論を研究。宮沢賢治の研究者としても有名であるが、「アジア文化の貯蔵庫」(岡倉天心)、「雑種文化」(加藤周一)等といわれる日本の文化の検証のために賢治を研究されている。王敏さんは、テーマの「アジアから見る」、つまり「外から見る」とは、「内と外」とは切断されたものではなく、「世界という広い空間から見る」ということであるが、賢治の作品は、アジアという広い空間・時間の中でとらえられたものであると言う。王敏さんのお話を聞くほどに、賢治がいかに中国やインドと繋がっていたかったかということが浮かび上がってくる。賢治はまた、花巻農学校の教員であったから、それを生徒にどのように伝えたのか、大変興味深い。

王敏さんは、伝統や歴史を学ぶ方法は多様であるが、日本の、少なくとも古代においては中国を学ばざるを得ないし、文化は互いに交流し合って成長してきたことも事実であると指摘。さらに、文化は生活から生まれてきたものであり、しかも、生活文化はアジアののみならず、昔から国境を越えてあった。だが、政治や国家体制などによって本来の素朴な文化から離れてしまう。人間ありのままの文化、古層の文化を知ることが必要。そうした民衆の視点からみたアジア共同体を作り出しえるのではないかと締めくくった。
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